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» 2017年03月22日 07時22分 公開

経営トップに聞く、顧客マネジメントの極意:「ぐっすり眠れる」ホテルの追及によって、顧客満足度を高めるスーパーホテル (2/2)

[聞き手:井上敬一、文:牧田真富果,ITmedia]
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五感を刺激するホテルを目指して

井上 4つ目のコンセプトである「ロハス」についてはどういった取組みをしているんですか。

山本常務(左)と聞き手の井上氏

山本 健康と環境に配慮したホテルという意味合いで「ロハス」というコンセプトを掲げています。空気や水にまでこだわることで、健康になってもらうことを目指しているんです。一部のホテルでは、地下の装置を通して汚れを取り除いた空気をホテル内に取り入れたり、ホテル内で使う水については、大阪府立大学と開発した粒子の細かい健康イオン水を提供しています。ぐっすり眠って、さらに健康になってもらいたいというのが「ロハス」に込めた思いです。いろいろな仕掛けによって五感を刺激することで、ロハスを感じてもらいたいと考えています。

井上 細やかな配慮による他との違いをお客さまが本能的に感じ取り、顧客満足度アップに結び付いているのだと思います。

山本 五感を刺激することによって、第六感まで刺激できるようになったら理想ですね。ホテルに泊まろうと考えたときに、直感的にスーパーホテルを思い出してもらうことを目指しています。

井上 スーパーホテルのメインターゲットはどういった層なんですか。

山本 メインターゲットは、週2〜3回頻繁に出張をする人、また工場地帯であれば、長期連泊をする人です。特に満足度が高いのは、女性のお客さまです。20〜50代の女性からはビジネスホテルで高い支持を得ています。細やかな取り組みによる五感への刺激は、女性の方が敏感に感じ取ってもらえるのだと思います。ロハスを追求していけばしていくほど、われわれがまだ見えていなかった潜在顧客にまでリーチする結果となりました。

効率化と顧客満足度向上の両方を叶える施策

井上 その他に顧客満足度を高めるための施策にはどういったものがありますか。

山本 効率化を図りながら、顧客満足度を高める施策がいくつかあります。そのひとつとして、ベッドの足を無くしたという事例があります。清掃員からベッドの足を無くしたらどうかという提案があり、採用したところ、大きな効果を得ました。ベッドの下の清掃を省略できるだけではなく、お客さまには天井を高く感じてもらえるというメリットがあります。

 また、天然温泉の設置も施策のひとつです。各部屋でユニットバスに入るよりも、天然温泉の方が水道代を抑えることができます。お客さまにとっても、手足を伸ばせる広いお風呂で天然温泉に入ることができるので、メリットが大きいのです。

井上 効率化と顧客満足度の両方を叶える仕組みという発想はとてもおもしろいです。スーパーホテルは、顧客満足度を高めるためのIT化をホテル業界の中でもいち早く行ってきたイメージがあります。IT化に関して、どういった取り組みをしてきたのですか。

山本 ITでできるものはできるだけIT化していこうというのがスーパーホテルの方針です。IT化によって効率を上げることによって、質の高いサービスの提供にマンパワーを集中させることができるのです。

 一般的に、100室規模のビジネスホテルでは、チェックインとチェックアウトの作業があるため7〜8人の従業員が必要だとされています。これをできるだけ省略できないかということで、自動チェックインシステムを導入しました。支払いが済むと領収書記載の暗証番号で部屋の鍵が開く仕組みになっています。このシステムによって、フロント人員が3〜4人で済むようになりました。

井上 お客さまの情報もITで管理しているんですか。

山本 顧客情報は一元管理しています。好みの部屋、枕の種類、領収書の有無など細かなことまで記録しているので、次に泊るときに、ニーズの先読みができるようになります。お客さまにロイヤルカスタマー気分を味わってもらい、リピーターになってもらうことを促しています。

井上 今後、挑戦したいことはありますか。

山本 地方創生に貢献したいと考えています。地方では、ホテルの需要があるにもかかわらず、出店しないケースが多くあります。東京や大阪に集中するのではなく、地方での需要にも目を向けたいと考えています。

 もうひとつは、世界展開です。20世紀型のホテルはファイブスターの贅沢を尽くしたラグジュアリーホテルでした。それに対して、われわれが目指しているのは、21世紀型の省資源・省エネルギーのホテルです。五感で快適さを感じてもらえる21世紀型のラグジュアリーを目指しています。21世紀型の新しいホテルのスタンダードとして、世界へと拡大していきたいと考えています。

対談を終えて

 「何かを得るには、何かを捨てなければならない」よく聞く言葉ですが、実践するのは簡単ではありません。あれもこれも取り入れようとして、結局は全てが中途半端に終わることが多いからです。

 スーパーホテルは「ぐっすり眠れる」という誰が聞いても分かりやすいサービスを完遂する覚悟を持ち、21世紀型ホテルのロールモデルを創り出しました。自社のサービスを絞り込み、差別化から独自化へと徹底する姿勢がスーパーホテルを勝ち組にした一番の要因だと感じました。強み以外は捨てるという姿勢は、他の業種も非常に参考になる実例ではないかと思います。

 全額返金保証制度は顧客の声を拾い上げるための施策で、もっと積極的に返金をしていこうといい切っているのには驚きました。通常は、返金を進んでやりたがるところはありませんし、クレームは避けようとします。机上の空論ではなく、顧客の声こそが真実であるという真の顧客マネジメントのかたちなのだと感じました。これからもスーパーホテルは常に斬新なアイデアで私達を喜ばせてくれるに違いありません。

プロフィール

井上敬一

ブランディングコミュニケーションデザイナー

株式会社FiBlink代表取締役

兵庫県尼崎市出身。立命館大学中退後、ホスト業界に飛び込み1カ月目から5年間連続ナンバーワンをキープし続ける。当時、関西最高記録となる1日1600万円の売り上げを達成。業界の革命児として、関西最大規模のホストクラブグループの経営業を経て、現在は実業家として企業、個人のブランディングやアパレル、サムライスーツなどのプロデュースを手掛ける他、人に好かれるコミュニケーションを伝える研修・講演を展開している。また、WEBセミナー「プレジデントキャンパス」により、中小企業経営者の学びの場をもっと身近なものにして日本経済を牽引する役割を目指す。

圧倒的な実績に裏付けられたコミュニケーションスキルをわかりやすく説く講演は、多くの企業・団体から支持を受けている。これまで数多くのメディアに取り上げられ、独自の経営哲学で若いスタッフを体当たりで指導する姿はフジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』で8年にわたり密着取材され、シリーズ第6弾まで放映されている。

 主な著書に、「ゴールデンハート」(フジテレビ出版)、「人に好かれる方法」(エイチエス株式会社)などがある。


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