たまに「ウチの製品は高くて売れない。売れないのは製造や技術のせいだ」と文句ばかり言う営業がいますが、まさに本末転倒です。営業の本質から外れています。こうした状況でも営業は、製造などに顧客の声を共有して改善提案するといった前向きな話をすべきだと考えています。自社の製造を育てられるのは営業だけです(その逆もしかり)。
次に、多くの会社が悩みを抱える在庫問題を解決する考え方です。在庫は多過ぎても少な過ぎても問題となりますが、これまでに多くの在庫改革に関わってきた経験も踏まえ、これからも変わらず必須になるポイントを3つ挙げます。
(1)権限と責任の一致
まずは、モノを買うことを決めてから使い切るまでの、在庫責任の明確化です。「モノを買うことを決めるヒト」と「最後まで責任を持つヒト」が同じであることは、絶対に守るべき原理原則と言えるでしょう。例えばメーカーの場合、モノを買うことを決める製造が、最後まで使い切る責任を持つべきと考えます。
在庫が最適化されていない会社の問題を探っていくと、「権限と責任の不一致」に突き当たることが今でもかなり多いです。ダメなメーカーでは、製造は「営業が言った売れそうな数に合わせて買った。調達が勝手に買った」と言い、一方で営業は「自分たちに在庫は関係ない」、調達は「営業や製造に指示された通りに買っただけ」と責任をなすり付け合っています。こんな状態では在庫は決して最適化されません。
(2)ダブルチェックの仕組み
モノを買う時には、「ミスを防ぐ機能」と「けん制機能」それぞれのダブルチェックが大事です。例えばモノを買う権限が製造にある場合は、購買がダブルチェックの役割を果たすことになります。特に後者の機能が大事で、欠品を恐れて多めに買い過ぎる製造に対し、購買が「過去の使用数から考えて、本当にその数が必要なのか?」と客観的なチェックを入れることで、買い過ぎを防ぐことが可能となるでしょう。なおここで注意すべきは、チェック機能が正しく働く体制を構築することです。仮に、製造のトップと購買のトップが組織上同じだと、ダブルチェックの仕組みは形骸化しかねません。
(3)データの力を活用したサプライチェーン最適化
欠品あるいは余剰を発生させないようにモノを買うためには、テクノロジーの活用が有効です。特にヒトが見切れないほどアイテム数が多い場合には、経験上、適切な発注はなされません。こんな時にデータ分析に基づき、需要トレンド、季節、価格の違いなどを盛り込んだ需要予測を立てることで、勘や経験に頼ることなく適切な発注が可能となるでしょう。
最近ではさらに、ソーシャル情報や顧客行動パターンなどの要素を需要予測に組み込んでいる企業もあり、どの会社も需要変動を捉えることに真剣です。と同時に分析だけではなく、需要変動に柔軟に対応するオペレーション力も重要です。例えば需要予測と生産管理、調達計画を密に連動したり、ダイナミックに変わる市場変化をサプライヤーにも共有して迅速対応したり、といったサプライチェーン全体の改革を進めている企業が成長を続けています。
株式会社コンサルティングベース 代表取締役。
京都大学大学院修士課程修了。森永乳業株式会社にて製造現場を経験した後、経営の道に転身。中堅中小の企業再生を強みとする山田ビジネスコンサルティング株式会社、およびグローバルコンサルティングファームであるアクセンチュア株式会社にて、マネジャーとして数多くの企業の業績改善・成長を主導。経営コンサルタントとして10年以上の経験を経て、株式会社コンサルティングベースを設立。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授