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» 2017年12月20日 07時23分 公開

ナムコの燃える組織の作り方。「この店で働きたい!」という店作りが顧客満足度アップにつながる経営トップに聞く、顧客マネジメントの極意(2/2 ページ)

[聞き手:井上敬一、文:牧田真富果,ITmedia]
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岩屋口 浅草花やしきは数字を伸ばし続けています。2015年人気キャラクターとのコラボイベントをしたことで、それまでにないくらいたくさんのお客さまが来ました。しかし、それは花やしきの本来あるべき姿ではありませんでした。花やしきの真のリピーターには歓迎されていなかったことに気が付き、それ以降そういったイベントはしていません。

 ナンジャタウンでも同じようなことが起きていて、キャラクターイベントによって一時的に新しいお客さまは増えても、テーマパークとしてのナンジャタウン自体のファンにはなかなか響きません。

 キャラクターに頼らずに、施設のベースをしっかり作った上で、キャラクターのエッセンスを取り入れるが重要だと思います。そうしないと事業が安定しません。

岩屋口氏(右)と聞き手の井上氏

現場のモチベーションがお客さまを楽しませることにつながる

井上 今後、アミューズメント業界はどう変わっていくのでしょうか。

岩屋口 時代とともに、アナログとデジタルの間を行ったり来たりしているので、これからはアナログなものに戻るのではないかと考えています。

 今のゲームセンターの機械はプレイするのが難しく、ゲームに詳しい人だけがプレイするものになっています。しかし、今は誰が見ても感覚的に分かるシンプルなゲームが売れる傾向にあります。

 昔流行ったプライズマシンをテスト設置しているのですが、かなり人気が出ています。今の若い人たちにとっては新鮮で新しいものに見えるのだと思います。人間が楽しいと思う瞬間は、時代が変わっても本質的には変わらないのです。

井上 お客さまを楽しませるため、他にはどういったことをしているのですか。

岩屋口 お客さまを楽しませるためにできることは、コンテンツ企画だけではありません。現場でできることがたくさんあります。お客さまを飽きさせないためには、お店のスタッフたちが努力をしていかなければなりません。現場のモチベーションを上げることがお客さまを楽しませることにつながります。

 働く目的は、お金だけではありません。やりがいや、感謝されること、チームワークの気持ちよさがあるからこそ、働くことへのモチベーションは高まります。この店で働きたいとスタッフに思ってもらえるお店作りをすることが、スタッフのモチベーションを高め、お客さまに還元されるのです。

井上 具体的にはどういった取り組みをしているのですか。

岩屋口 ナムコには、社員やアルバイトスタッフを元気にする「もっと元気チーム」という部署があります。去年その部署のすすめで「365日毎日岩さん」という企画をしました。私の写真と私が考えた言葉が載っているものを毎日全店に配布し、みんなの目に留まる場所に張り出してもらいました。「失敗しない人にはなるな!」「悩む前に、取りあえずやってみよう!」「前に進めば必ずたどり着ける!」など、毎日自分で言葉を考えました。

井上 どうしてその企画を始めたのですか。

岩屋口 モチベーションの高い燃えるような組織を作るために、スタッフのマインドをどう変えたらいいのかを考え、この企画を始めました。

 笑顔、あいさつ、アイコンタクトをしろと教えても、したくないと考えている人はしません。その人のマインドを変える心のスイッチを押し、根本からマインドの在り方を変えることが必要でした。心に響かないと人はやる気にはなりません。

 この企画を始める前は、うまくいく確信はなかったのですが、だんだん社内でムーブメントのようになっていきました。徐々に組織が変わっていき、あるときに突き抜けて変わったのを実感しました。現場で声を掛けられることが増え、サインを書いたり、握手を求められたりすることもあり、経営と現場の距離が近づきました。

井上 岩屋口さん自身が1年間やりきっている姿を見せたのですね。

岩屋口 この企画が終わったとき、社員が全事業所を回って私のためにビデオを作ってくれました。この企画を通して、現場のスタッフが変わっていったのを実感し、感動しましたね。

井上 素晴らしいことですね!もっと元気チームは他にどんなことをしているのですか。

岩屋口 そのお店が元気かどうかを調査する「元気アンケート」を実施したり、社員やアルバイトの取り組みを紹介する動画を制作したりして、社内限定で公開しています。

 たった4人の部署ですが、社内を元気にすることを目指し、あらゆる取り組みを自分たちで考えて行っています。

井上 社員教育としてシステマチックな仕組みがあるのかと思っていましたが、熱くアナログなやり方だったのですね。

〇編集後記

 私自身が岩屋口氏と話す前に抱いていたナムコの企業イメージは、デジタル、最先端、マーケティングシステムというクールなものでした。しかし、実際には、とにかくやってみるという考え方、現場の接客重視、もっと元気チームなど、「人」が全てというものすごくホットな企業でした。顧客満足を真に支えるのはプロダクトではなく人なのです。「人間は遊ぶ存在である」という創業者の精神が社内からありありと感じられるのもまた、ナムコの強みだと思いました。

 人をワクワクさせるアミューズメント施設は、ワクワクしている人にしか創り出せません。顧客の感動や高揚感を生み出すため、スタッフ自身の感動創出や高揚感を大切にしていることは、私にとって新鮮な顧客マネジメントのかたちでした。久しぶりに童心に戻り、早く同社の新しいサービスを体感したくなりました。やはり、面白いものは、面白い集団にしか創れないのですね。超発想集団は健在です。

プロフィール

井上敬一

ブランディングコミュニケーションデザイナー

株式会社FiBlink代表取締役

兵庫県尼崎市出身。立命館大学中退後、ホスト業界に飛び込み1カ月目から5年間連続ナンバーワンをキープし続ける。当時、関西最高記録となる1日1600万円の売り上げを達成。業界の革命児として、関西最大規模のホストクラブグループの経営業を経て、現在は実業家として企業、個人のブランディングやアパレル、サムライスーツなどのプロデュースを手掛ける他、人に好かれるコミュニケーションを伝える研修・講演を展開している。また、Webセミナー「プレジデントキャンパス」により、中小企業経営者の学びの場をもっと身近なものにして日本経済をけん引する役割を目指す。

圧倒的な実績に裏付けられたコミュニケーションスキルを分かりやすく説く講演は、多くの企業・団体から支持を受けている。これまで数多くのメディアに取り上げられ、独自の経営哲学で若いスタッフを体当たりで指導する姿はフジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』で8年にわたり密着取材され、シリーズ第6弾まで放映されている。

 主な著書に、「ゴールデンハート」(フジテレビ出版)、「人に好かれる方法」(エイチエス株式会社)などがある。


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