このように、安易に手助けせずに、当事者意識を持たせるように自分で考えさせることが大切です。一方で、指導者は、新人に与えた仕事を自分ごとにさせるために「仕事を任せるけれど放任しない」というスタンスを貫くことも必要です。基本は一人で実施させるけど、しっかりと観察している姿を示すことで、新人は安心して主体的に動けるわけです。
(新人が安易に「私には難しいです」と相談に来たら)
「一人で乗り切るアイデアを一緒に考えてみない?」
「初動」を速めるとはどのようなことか、具体的に想像がつくでしょうか? 例えば、会議で、私が「いまの件については、あとで○○さんに確認しておきます」と発言すると「いまこの場で確認とれる?」と上司からの10秒アプローチが入ります。
また、私が上司との打ち合わせで「今日の打ち合わせで仮決めした面談の日時は、後ほど会議室をとってから改めて連絡します」と伝えると「いまこの場で会議室の予約とれるかな?」と10秒アプローチで促されます。
このように、少しでもあとでやろうという姿を見せるとその場ですぐに改善を求められました。これは小さなことかもしれませんが、このレベルから初動の速さを求めることができるわけです。
いま、この瞬間に一歩を踏み出すことは、仕事を前に進める上でとても大切です。結果的に、そのわずかな一歩を踏み出すか踏み出さないかの違いが、積もり積もると数日分の遅れにつながる場合があります。この遅れをあとから取り戻すのは大変です。そうならないためにも、一歩でもいいから「いまこの瞬間からスタートを切る新人」に育てていきましょう。
(新人がその場ですぐに行動し始めないとき)
「この場でいますぐに始められることって何かな?」
期限に対する意識が高まると、不思議と仕事の質が上がるという経験をしたことはないでしょうか?
私は新人に、よく以下のような10秒の時短質問を投げかけていました。
「大至急、今日の17時までに企画書のラフ案を提出してもらえるかな?」
「17時までに」と時間を区切られると、新人は「今○○時だからあと数時間しかない!」と思い、その場ですぐに企画案の全体像を考え始め、必要な情報収集を開始します。とにかく書き始めないと定時までの課題提出に間に合わないため、自動反応的に行動の一歩が早まります。
三つ子の魂百までという言葉がありますが、このタイムプレッシャーに慣れさせることが、早期育成のためにはとても大切です。ゆったりとしたスケジュールの中では、緊張感も少なく、ついタスクを先送りにしたり、初動が遅くなってしまい、結果的にクオリティーを上げようという意気込みがトーンダウンしてしまうのです。
仕事のクオリティーを高めたい新人がいたら、初動が遅いときに、「依頼した仕事で、今日中に実施できることはなんだろう?」「今日中にやっておくことで、後々仕事がスムーズになることはなんだろう?」といった質問を通じて10秒で訓練することができます。
「指示」にしても「質問」にしても、新人を早く成長させたければ、仕事の依頼と同時に、今日やるべき作業をクリアにして、スタートダッシュさせることが大切です。
(新人に、仕事のクオリティーを高めさせたいとき)
「大至急、○○の対応を○○時までにお願いできるかな?」
以上、質問による「10秒会話」における質問フレーズをお伝えしました。いろいろな角度からの質問フレーズを用い、ぜひ、リモート環境下においても、新人が主体的に考える10秒会話の場面を増やしてください。
人事系コンサルティング会社を経験後、2006年ソフトバンク(旧ボーダフォン)入社。
ソフトバンクユニバーシティの立ち上げに参画し、研修の内製化をリードする。
日本HRチャレンジ大賞人材育成部門優秀賞、ソフトバンクアワードの受賞をはじめ、アジア初で米国教育機関よりPike’s Peak Awardを受賞。その他、千人規模の新人研修やエルダー(OJT、メンター)教育にも携わり、新人、若手の早期育成にも貢献する。
2015年に講師ビジョン株式会社創業。社内講師の育成トレーニング、OJTトレーナー研修、新人研修などを提供する。近著に『10秒で新人を伸ばす質問術』(東洋経済新報社)がある。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授