「ECサイトを立ち上げ、オリジナルの雑穀を販売したり、社食レジと連動したり、ガラケー版/スマホブラウザ版の開発をしたり、デパ地下に総菜屋をオープンしたりしました。総菜屋では、スタッフも集まらなかったので、私自身もレジに立ったりしていました。現在は、これらのサービスをほとんど閉じていますが、たくさんの学びが得られ、のちの成長の糧にはなったと考えています」(天辰氏)
転換期は、2013年〜2014年に公開したスマホアプリのヒットだった。当時、食事管理系のスマホアプリはあったが、簡易なカロリー計算程度のもので、あすけんのような本格的なアプリはなかった。そのため、PC版・ガラケー版を使っていた数千人の既存会員が、一気にスマホアプリをダウンロードした。
結果として、スマホアプリを公開して、すぐにダウンロード数トップ10入りを果たし、さらなる会員の獲得につながった。天辰氏は、「スマホアプリがヒットしたのは、サービス提供当時から、あすけんを利用してくれているロイヤルカスタマーのおかげです。スマホアプリのヒットにより、まわりのイメージが大きく変化しました」と話す。
会員数50万人までは9年かかったが、50万人〜100万人は1年半で実現。直近1年では100万人の会員を獲得している。ある程度まで成長すると、成長が成長を生む状況を確立できた。成長サイクルは、大きく3つ。まず会員数が増えると、ストアやSNS、メディアでの露出が増え、さらに会員が増えるという1つ目のサイクルが生まれる。
会員数が増えると売上・利益が増え、予算も増える。予算が増えると施策の質や回数が向上しプロダクトの質が向上し、会員が増えるという2つ目のサイクルが生まれる。さらに、会員が増えると、人材市場での認知が上がり、従業員の数と質が向上し、プロダクトの質が向上するので会員が増えるという3つ目のサイクルが生まれる。
「会員数が100万人を超えると、ネスレのウェルネスアンバサダーやドコモのdヘルスケア、資生堂の肌パシャなど、世界を代表する企業の健康サービスとのコラボレーションも実現できました。外部の評価も高くなり、日本生産性本部の“日本サービス大賞”の優秀賞など、さまざまな賞も受賞できました」(天辰氏)
「諦めなかったことも成功要因の1つです。まったくダメだった施策もありましたが、成果を積み上げたことで、社内の信用を少しずつ獲得できました。上層部も諦めずに、現場がやりきれるように、耐えきれるように支援してくれたことも成功要因です。2007年の創業から、潜伏期間が7〜8年ありましたが、ここで止めなかったことは、経営陣に感謝しています」(天辰氏)。
あすけん自体がグリーンハウスの思い、歴史の延長線上にあるDX事業・ITサービスであったことが諦めなかった理由でもある。天辰氏は、「食と健康に貢献する取り組みでなければ、もっと早く白旗を上げていたと思います」と話す。
天辰氏は、「私自身、特別キラキラした経歴ではありませんが、それでも念じれば通じるというか、努力すれば花を咲かせることができました。DXの推進、特に新規事業では、大企業とベンチャー的要素のメリットを生かし、いわゆるベンチャー起業家に負けない覚悟と行動でやりきれば必ず成功します。皆さんも諦めないでチャレンジし続けてください」とエールを送って締めくくった。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授