(5)エンタープライズデータの提供者であれ。
アプリケーションは進化してもデータは残ります。今後、もっとも価値があるのはデータになる可能性もあり、データマネジメントが非常に重要になります。そのためには、まずはマスター整備などの泥臭い作業を避けては通れません。どのようなデータが必要なのか、まずは手作業でもいいので管理し、徐々に自動化して、データマネジメントのチームを作ることが必要です。真にデータ経営ができる企業を目指して欲しいと思います。
(6)サイバー攻撃に備えよ。
リモートワークが普及し、VPNに対するサイバー攻撃やランサムウェアの被害が増えています。情報漏えいなどが発生すると、経営問題になります。そこで今後は、全てのデータから本当に必要なデータだけを徹底的に守るという考え方にシフトしていくことが必要です。それに伴い、セキュリティの考え方も変化して、最近ではゼロトラストという言葉を耳にするようになりました。こうした新しいトレンドを見据えながら、ロードマップを作ることが必要です。
(7)体制を整備し、人材を育成せよ。
今後、どれだけ優秀なエンジニアを採用し、育成できるかが企業の競争力のカギになります。IT子会社があれば、そのエンジニアを教育し、強いIT子会社に育てます。中途採用する場合も、親会社では急に給料をアップすることはできませんが、子会社であれば他社よりも高い給料で採用することができます。逆にIT部門の管轄のもと、IT子会社の優秀なエンジニアを事業部門に派遣し、一緒にデジタル化を進めるというインソース化を行っていくべきでしょう。
IT部門がやるべき7つのことと同様に大事なのは、組織文化をデジタルカルチャーに変革することです。モード2を取り入れるなど、新しいことにチャレンジできる文化を作っていくことが必要です。例えばデジタルネイティブ企業は、意思決定も迅速で、デジタルを活用した新たなチャレンジを繰り返しています。
デジタルネイティブ企業がマインドを変革する具体的な実践方法として、OKR(Objectives and Key Results)や全社員ミーティング、20%ルール、仕事を時間で管理しない、報酬は不公平に、互いに評価しあう、失敗に重きを置く文化などを実践しています。イノベーションに必要な文化は、以下の6つです。
(1)明確な方向感と視座
(2)人材の多様性
(3)上下間の風とおしのよさ
(4)ネットワーク密度の高さ
(5)失敗に寛容な文化
(6)組織における「遊び」の存在
幸福な社員からイノベーションは生まれます。慶応大学の前野隆司教授の『幸福学』によれば、ハッピーな社員は生産性が1.3倍で、創造性が3倍であるとアカデミックに証明されています。欧米では、幸せな職場をアサインするCHO(チーフハピネスオフィサー)という役職も、多くの企業で誕生しています。日本でも数社に同様の役職が誕生しています。企業も利益至上主義から社会貢献に向かい、愛のある経営へと移り変わっていかねばならないでしょう。
例えば、アジャイル開発の導入で幸せな職場を作ることもできます。アジャイル開発こそが、ソフトウェア工場から脱却し、プログラマーを開放します。全米一幸せな会社といわれるJoy, Inc.は、フラットな組織で、セルフマネジメントで、ペアを組みPCを共有して作業を行います。子どもやペットを連れてくる社員もいます。まさに次世代の新たな組織スタイルを実践しています。
新たな時代に向け、いろいろなものが共振しています。アジャイル開発はもちろん、次世代型組織であるティール型、PDCAサイクルからOODAサイクルへ、企業の存在意義を問うパーパス経営、マインドフルネスの活用、イノベーションのためのU理論、デザイン思考からアート思考へなどです。リーダーシップも統率型から変革型に移っています。「俺についてこい」ではなく、みんなで一緒に解を探っていく新たなリーダーシップです。
IT部門がコロナの回復期にすべきことは、会社そのものがアジャイルに意思決定ができ、変化できるようにしていくことです。ビジネスに貢献する企画の実現にこそIT部門の役割があります。そのためには、イニシアチブをとれるだけの実力を身につけることが必要です。新たな時代に向け、IT部門が先頭を切って、道を切り開いてほしいと思っています。
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【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授