第1回ドラッカー「部下をつぶす上司と部下を生かす上司の違いとは?」ドラッカーに学ぶ「部下を動かそうとする考えは時代遅れ」(2/2 ページ)

» 2021年11月17日 07時09分 公開
[山下淳一郎ITmedia]
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 この経験での一番の学びは、部下に対する上司の在り方だった。上司の仕事とは、「部下を自分の思い通りに動かすこと」ではなく「部下自身に何をすべきかを考えさせること」だと知った。

部下を命令で動かそうとする考えは時代遅れ

 大昔、上司と部下の違いは、命令する側と命令される側の違いくらいにすぎなかった。

 上司がやっている仕事と部下がやっている仕事は同じだった。上司は部下より多くの経験を積んでいた。経験の浅い部下よりも上司の方が仕事ができて当然だった。

 かつては、部下を命令で動かすことがマネジメントだと考えられていた。今日、時代の流れとともに、仕事は細分化され、専門化された。上司は、部下の仕事の詳しい中身まで分からなくなっている。例えば、ソフトウェアを開発する会社では、上司は完成させるものは分かっていても、部下が作るプログラムの中身までは分からない。また、上司の仕事は「新しい商品を出すこと」であって、「新しい商品を考える」のは部下の仕事といったケースはよくあることだ。このように、現在は、上司の仕事と部下の仕事はまったく違うものになっている。部下を命令で動かそうとする考えが間違っている。いや、間違っているだけではない。時代遅れである。

 上司の仕事は、「部下を動かすこと」ではなく、「部下の強みを生かすこと」に変わった。上司がいちいち口出しをするような組織は発展しない。上司の仕事は部下の仕事に首を突っ込むことではない。アドバイスすることでもない。何が問題かを部下自ら気付けるように導くことだ。会社が進む方向性を明確に打ち出し、それさえ組織で共有できれば、上司の指示はいらない。

今日の上司が自ら課すべき3つの仕事

 時代はすっかり変わった。時代が変わった以上、上司はこれまでの自身の在り方と、今までの仕事のやり方を変えなければならない。

 1、部下に責任を持たせる

 自分が担うべき責任は何か。部下とじっくり話し合い、上司の役割として、自分が担うべき責任について部下の考えを導き出す。

 2.、期待の合意を創り出す

 自分が期待されていることは何か。部下の考えをじっくり聞き、上司の役割として、部下の考えを明らかにすることを助ける。

 3、部下の強みを生かす

自分の強みを生かしてどのように成果をあげるか。上司として部下の強みを理解し、部下が成果をあげる筋道を明らかにする。

 冒頭申し上げたドラッカーの言葉はこうだ。「知識労働者にとって必要なものは管理ではなく自立性である。知的な能力をもって貢献しようとする者には、大幅な裁量権を与えなければならない。ということは、責任と権限を与えなければならないということである」

 上記の3つはそれを実践することになる。今日から上記の3つのことについて部下と話し合う場をもって、部下の考えを導き出してあげてほしい。それが、今の時代に課せられた上司の仕事だからだ。

著者プロフィール:山下淳一郎 ドラッカー専門の経営チームコンサルタント

ドラッカー専門の経営チームコンサルティングファーム トップマネジメント

東京都渋谷区出身。ドラッカーコンサルティング歴約33年。外資系コンサルティング会社勤務時、企業向けにドラッカーを実践する支援を行う。中小企業の役員と上場企業の役員を経て、ドラッカーの理論に基づいた経営チームをつくるコンサルティングを行う、トップマネジメントを設立。現在は上場企業に「経営チームの研修」「経営幹部育成の研修」「後継者育成の研修」を行っている。 

著書に『ドラッカーが教える最強の後継者の育て方』(同友館)、『ドラッカー5つの質問』(あさ出版)、『新版 ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方 』(同友館)、『日本に来たドラッカー 初来日編』(同友館)、『ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方 』(総合法令出版)、『ドラッカーのセミナー』(Kindle)、『ドラッカーが教える最強の事業承継の進め方』(Kindle)がある。主な連載に『ドラッカーに学ぶ成功する経営チームの作り方』(ITmedia エグゼクティブ)がある。ほか多数。


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