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» 2021年12月01日 07時01分 公開

企業の成長は「ポストコンサル採用」がカギを握る〜採用力を高める4つのステップ

取り巻く競争環境が厳しさを増す中、多くの企業で既存事業のビジネスモデル再構築や新規事業の立ち上げなどの大規模な変革が必要不可欠となっている。

[渡辺秀和,ITmedia]

 今、積極的に経営幹部・幹部候補の採用を行う大手企業やベンチャー企業、中堅オーナー企業の多くが「コンサル出身者(ポストコンサル)を採用したい」と口をそろえます。

 よく知られているように、事業会社の年収水準に比べ、コンサルティングファームの年収は総じて高い業界です。なぜ、通常よりも高い条件を出してまで、採用したい企業が増えているのでしょうか。

 私はこれまで、1000人を越えるビジネスリーダーやポストコンサルに対して、マッキンゼーやBCGなどをはじめとするコンサルティング業界、大手企業やベンチャー企業の経営幹部などへのキャリアチェンジを支援してきました。

 今回は、ポストコンサルが高い評価を受ける理由と彼らを採用するための方法を、人材市場の最前線に身を置く立場から伝えようと思います。

ポストコンサル採用に乗り出す企業が増加中

 取り巻く競争環境が厳しさを増す中、多くの企業で既存事業のビジネスモデル再構築や新規事業の立ち上げなどの大規模な変革が必要不可欠となっています。特に、M&Aとそれに伴う組織統合、DX推進、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)運営、SDGs推進など、既存社員では対応の難しいテーマが増えてきています。

 これらの変革を推進できる経営幹部・幹部候補として、白羽の矢が立ったのが「ポストコンサル」です。コンサルティング業界には、このような先端的なテーマの改革に精通している人材が豊富にいます。

 従来は、その年収水準の高さから、外資系企業やPEファンドなどを中心とする一部の企業でのみ採用が行われていました。しかし、昨今では日系大企業はもちろんのこと、資金調達に成功したベンチャー企業や事業承継で悩む中堅オーナー企業でも採用が急増し、多くの企業が獲得にしのぎを削るようになっています。

採用企業がポストコンサルへ熱い視線を注ぐ理由

 ポストコンサルが人材市場で高い評価を受ける理由は主に2つあります。

 1つ目の理由は「汎用性の高い問題解決能力」です。コンサルタントは20〜30代のうちから、さまざまな企業を対象に経営者視点で専門領域の問題解決を行っています。このため、固有の業界や企業に縛られない、汎用的な問題解決能力を培っています。日常的に経営課題の解決を繰り返し行っているため、若くとも豊富な改革経験を持っているのです。

 2つ目の理由は、「高度なリーダーシップ」です。現代のコンサルティングファームは、解決策の提案だけでなく実行支援まで踏み込み、クライアントへ具体的な成果をもたらすことが重視されています。「机上の空論」と揶揄されることもあった、コンサル黎明期のプロジェクトとは異なります。そのため、クライアント企業の社員やクライアント以外のステークホルダーを巻き込んで動かすという経験を若いうちから積んでいます。会社内の上下関係や大企業の看板を使って、組織を動かしているわけではありません。ロジック面での説得力はもちろん、関係者の感情にも配慮した高度なリーダーシップを身につけている人材が多いのです。

ポストコンサル採用を成功させる4つのステップ

 このように評価の高いポストコンサルの採用を成功させるためには、以下の4つのステップで採用活動を行うことを薦めています。

(1)人材市場でのブランドを構築する

 効果的な採用活動を行うためには、自社の「採用ブランド力」を高めることが大切です。人材市場でのブランド力が低いと候補者を集めることもできませんし、採用する際に他社よりも高い条件を提示せざるを得なくなります。

 そのためにまずは、自社の採用ブランド力を客観的に把握する必要があります。実は、自社ブランドに対する社内の認識と人材市場からの認識には大きな隔たりがあることが珍しくありません。一般に認知度の高い大企業が、ポストコンサルにとって働きたい会社、つまり採用ブランド力が高い企業とは必ずしも言い切れないのです。

 例えば、東京大学の松尾豊教授の研究室出身者をはじめとする東大系のAIスタートアップには、採用ブランド力の高い企業が見られます。一般的な知名度は低くても、抜群に優秀な創業メンバーとともに、社会的に大きなインパクトを与えていけると期待を寄せるポストコンサルが少なくありません。一方、財閥系の大企業でも、求人に関心を持つ人材がほとんど現れないということも起こり得ます。

 昨今の優秀な人材は、事業の社会的意義や、フェアで活躍しやすい環境を重視する傾向があります。自社の存在意義や社会へ与えるインパクト、若くても優秀であれば活躍できる組織であることを分かりやすく伝えることが大切です。「財閥系企業だから」「従業員が数十万人いる超大企業だから」といった点にひかれるポストコンサルはわずかです。むしろ、「旧態依然としている企業」「個人の持つ裁量が小さい」と認識されると、採用上は不利になります。

 上記の件を考慮したうえで、自社が伝えるべきメッセージを再構築した後は、自社の魅力を候補者へ知ってもらうために、キャリアセミナーを開催したり、ビジネス誌や人材企業が運営するオウンドメディアへの記事掲載を行ったりすると良いでしょう。

(2)幹部人材向けの採用プロセスを構築する

 一般に新卒採用のプロセスと中途採用のプロセスは異なります。それと同様に、ポストコンサルなどの幹部人材向けの採用プロセスを、若手層の採用とは別に用意することも大切です。この記事を読んでいる40代、50代のエグゼクティブの皆さんの中でも、転職活動で若手層と同様に扱われて、初回面接で志望動機について根掘り葉掘り聞かれるとしたら、応募をちゅうちょする人も少なくないでしょう。

 一例として採用面接の前に、候補者への評価を行わず、自社の魅力や仕事内容の実態について伝える「カジュアル面談」を設けると、候補者も安心して応募できるようになります。

 カジュアル面談では、候補者がざっくばらんに質問できるため、応募企業への理解が深まります。これによって、候補者は自分の志向とのフィットを確認できたり、自分が貢献できることを具体的にイメージできるようになったりします。採用面接の場や入社した後での行き違いが減る点でも優れています。

 また、優秀な人材は、優秀な人材と一緒に働くことを望む傾向があります。そのため採用に長けた企業は、自社のエース級の人材を採用担当に配置しています。面接官が自社事業の社会的意義や仕事の魅力などを適切に話せるように、トレーニングを行うことも欠かせないでしょう。面接官や採用責任者は、人材市場における自社の看板となることを認識しておくことが肝要です。

(3)人材市場の相場に見合った条件を提示する

 オファー時に人材市場において競争優位性がある年収水準やタイトル(肩書)を提示することも必要不可欠となります。

 いくら企業の社会的意義や仕事の魅力が伝わっていても、魅力的な採用条件を提示しなければ採用はできません。「自社の人事制度ではこの程度しか提示できない」と自社都合に固執した年収やタイトルでは、厳しい人材市場での競争には勝てないでしょう。

 特に、人材市場における「競合」とは同業他社だけではないことに注意が必要です。「自分たちは化学業界ではトップ企業だから大丈夫」「小売業界ではNo.1の給与水準だから十分だ」などと高をくくっていては危険です。

 昨今、GAFAに代表されるビックテックが業界の垣根を超えて参入してくると、危機感を募らせている企業も多いでしょう。しかし、人材市場にはもともと業界の垣根が存在していないのです。優秀な人材を巡って、コンサルティングファームや外資系事業会社、総合商社、ストックオプションを用意したベンチャー企業、外資投資銀行、PEファンドなどの強力なライバル企業が、業界を跨いでしのぎを削っています。そのため優秀な人材を採用するためには、自社都合ではなく、このようなライバル企業を念頭に置いて、人材市場の相場に基づいた条件提示をする必要があるのです。

(4)力を発揮できるポジションへアサインする

 入社後にアサインするポジションについても注意が必要です。

 「取りあえず会社のことを理解するために、まずは営業現場で経験を積んでもらおう」というような配属を時折見かけますが、リスクの高いアサインだといえるでしょう。

 ポストコンサルは優秀だといっても、現場業務に精通しているわけではありません。成果があがるわけもなく、他社員からも「鳴り物入りで入社したのに、たいしたことはない」と思われるでしょう。そればかりか、採用した経営陣への社員からの信頼も揺らぎかねません。

 同様に、既存事業の責任者として、採用することもあまりお薦めできません。短期間で既存事業の業績を向上させるためには、現場業務に精通していないと困難ですし、部下たちも入社してきたばかりで経験の浅いリーダーにはついていかないでしょう。

 ポストコンサルはリーダーのブレーンや、既存社員には困難な新しい道を切り開くような業務がフィットしやすいのです。具体的には、CEOの特命プロジェクトや全社横断プロジェクトの責任者、経営企画部門のリーダー、M&A推進担当、新規事業開発担当などが挙げられます。経営者の方針を受けて0からプランニングを行い、実現に向けて周りを巻き込みながら推進していく力を有効に活用することが、企業にとってもポストコンサルにとっても良い結果となるでしょう。

優秀な人材が集まる組織になるか、流出する組織になるかの岐路

 最後に、ポストコンサルなどの優秀な人材を採用できる体制を整えることは、現代の企業にとって、採用の枠を超えた企業経営の根幹に関わる重要な課題であると伝えたいと思います。

 仮に優秀な人材を採用できないような組織運営をしていたとすると、いったいどのようなことが起こるでしょうか?

 現在の人材市場には魅力的な転職先がたくさんあり、誰でも容易にアクセスできるようになっています。リクナビNEXTやビズリーチなどの人材サービスに登録すると、優秀な若手であれば月間100~200件程度のスカウトメールが届くでしょう。

 このような環境下において、優秀な人材をひきつけられない組織運営をしていたとすれば、たちまち自社のエース社員が人材市場に流出してしまいます。人数によっては会社の屋台骨を揺るがすような事態となってもおかしくありません。

 つまり、優秀な人材を採用できる体制を整えることは、在職する人材をリテンションするためにも必要であり、企業の維持と発展のために欠かせないことなのです。まさにポストコンサル採用は人事だけの問題でなく、経営者が真剣に向き合うべき重要課題ではないでしょうか。

著者プロフィール:渡辺秀和

コンコードエグゼクティブグループ CEO

一橋大学商学部卒業。株式会社三和総合研究所(現:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)戦略コンサルティング部門を経て、2008年に株式会社コンコードエグゼクティブグループを設立。

1000人を越えるビジネスリーダーに対して、マッキンゼーやBCGなどの戦略系ファームをはじめとするコンサルティング業界、外資系企業・ベンチャー企業の経営幹部、PEファンド、起業家などへのキャリアチェンジを支援。第1回「日本ヘッドハンター大賞」コンサルティング部門で初代MVPを受賞。2017年に東京大学で開講されたキャリア設計の正規科目「キャリア・マーケットデザイン」のコースディレクターとして、全体企画・コンテンツ制作・講義を担当するなど、学生へのキャリア教育活動を積極的に行っている。著書の『ビジネスエリートへのキャリア戦略』(ダイヤモンド社刊)、『未来をつくるキャリアの授業』(日本経済新聞出版社刊)は東京大学での授業の教科書に選定された。近著の『新版 コンサル業界大研究』(産学社刊)は東京大学生協本郷書籍部でランキング第1位を獲得する。近年は、コンコードベンチャーズを設立し、教育改革や地方創生などに挑戦するソーシャルスタートアップへの投資や経営支援を展開している。


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