現在、変革の取り組みのテーマとして、大きな変革から小さな変革まで、IT、非ITに関わらず、約150のプロジェクトを推進。3カ月に1度、テーマの見直しを行っている。また変革に関する暗黙知を形式知とし、フレームワーク・サービス化。現在、約30種類の変革のフレームワークを展開している。
4つのXの1つであるCXは、事業ポートフォリオやビジネスモデル改革である。富士通では、いかに富士通らしさを生かし、社会に貢献できるかを、現在のビジネスの延長線上ではなく、2030年のありたい姿や社会情勢から事業ドメインを定義し、「Fujitsu Uvance」という新たな事業を立ち上げつつある。Uvanceは、UniversalとAdvanceを掛け合わせた造語で、社員投票によってネーミングが決定された。
Fujitsu Uvanceは、Sustainable Manufacturing、Consumer Experience、Healthy Living、Trusted Society、Digital Shifts、Business Applications、Hybrid ITの7つの重点注力分野で構成。多様な価値を信頼でつなぎ、変化に適応するしなやかさをもたらすことで、誰もが夢に向かって前進できるサステナブルな世界をつくるという思いが込められている。福田氏は、「7つの分野は定義されたばかりで、今後数年かけてプレゼンスや価値を発揮できる企業になることを目指しています」と話す。
2つ目のMX、3つ目のOXでは、「One Fujitsu」プログラムを推進。これまでは、6リージョン、グループ会社ごとに個別に最適化されたマネジメント・オペレーションだったため、社内ITも個別最適で、データや業務プロセスが分断され、グローバルでの効率化が困難な状況だった。それを、世界中でFujitsu Uvance事業を効率的に、同じように展開できるマネジメント・オペレーションに変えるために、グローバルで1つのモデルへと大きく変える経営・業務・ITの三位一体改革を推進している。
「世界で1つの業務のやり方、世界で1つのITを目指すのがOne Fujitsuです。これはITプロジェクトではなく、経営プロジェクトです。標準化の対象は、(1)戦略、(2)組織、(3)制度・ルール、(4)データ、(5)業務プロセス、(6)アプリケーション、(7)ITインフラであり、80年を超える富士通の歴史上、初めてのチャレンジです。
(1)〜(5)は、ビジネスや業務側が標準をデザインする分野で、ここで作ったグローバル標準モデルを、(6)と(7)でITに適用し、仕事の仕方、マネジメントの仕方をグローバルで変革する。世界で1つの富士通標準モデルを作る、経営・業務・ITの三位一体のプロジェクトです」(福田氏)
4つ目のEXは、ヒト・組織・カルチャーの変革。時代背景もあり、メンバーシップ型雇用からジョブ型人材マネジメントに移行した。また、会社と社員の関係性を「自律」と「信頼」に見直し、信頼に基づき、制度やプロセスを変え、働く場所、リモートワーク比率、ワーケーション制度、副業制度、社内複業制度などを次々と見直した。
「人材マネジメントのフルモデルチェンジと呼んでいます。中核となる制度が“ポスティング”で、社員は自分自身でキャリアのオーナーシップを持ち、自分で手を挙げてさまざまなポジションにチャレンジする人事の仕組みです」(福田氏)
評価に関しても、パーパスや富士通ウェイ、各組織のリージョン、個人の成長などに対し、どれだけチャレンジしたかを360度で評価するなど、これまでの成果主義とは少し違う新たな評価制度である「Connect」へと刷新した。
さらにFujitsu-VOICEという、声を力に変えて変革の風を起こすプログラムを推進、延べ1300回以上、いろいろな形で経営の意思決定に生かしている。またアントレプレナーシップにおいては、この分野では30年連続で世界ナンバーワンの実績を持つバブソン大学 山川准教授が全面監修したプログラムを採用。3年間で1000人の社内起業家の育成を目指し、現在グローバルで約400人がプログラムに参加している。
福田氏は、「富士通のDXは、パーパスを中核に4つのXを通じて、自分たちがありたい姿へ変革していく取り組みです。そのために、どのような推進体制、メカニズムで進めるのが効果的か、ITやデータをどのように活用するかなど、試行錯誤しながら進めています。山登りに例えると、現在4合目付近。まだ頂上は見えませんが、明らかに見える景色が変わってきました。今後も、トライ&エラーを繰り返しながら、スピーディーに進化していきたいと考えています」と締めくくった。
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早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授