思い込みの「競争」から解放された「リデザイン」ビジネス発想ができているのか既存の思い込みを捨て、「人の健康、心、関係性」に立ち返ろう(2/2 ページ)

» 2022年11月24日 07時09分 公開
[藤田康人ITmedia]
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 日本にも、同じような視点から成長を続けている企業があります。それは、クラフトビール最大手のヤッホーブルーイング(本社:長野県・軽井沢町)です。「よなよなエール」「インドの青鬼」「水曜日のネコ」など、独特なネーミングと斬新なパッケージデザインのビールを見かけたことがある人も多いかもしれません。

 ビールを飲む生活者のことを「ファン」と呼んだり、ビールを楽しむイベントを開催したり、ビールに合うおつまみのつくり方をインターネットラジオで発信したりといった活動を通して、クラフトビールが持つ味を楽しむことに加えて、人との交流から生まれる幸福感を訴求しているところは、これまでのビール業界になかった新しいアプローチといえると思います。

リデザインのための3つの幸福って何?

 視点を変えてみる。既存のビジネスを長く続けているほど、なかなか難しいことかもしれません。しかし、固定観念や思い込みから解放されなければ、行き詰まりから抜け出すのは容易ではありません。

 そこでヒントになるのが、人が幸せを感じるときに分泌される、ドーパミン、セロトニン、オキシトシンという3つの物質です。

 「安心、やすらぎ」といったことを感じるときにセロトニンが分泌され、そこで味わうことができるのが「心と体の健康からくる幸福」である「セロトニン的幸福」。

 夫婦、恋人、親子、兄弟、友人といった相手との安定した関係によって生まれるプラスの感情や喜びなど、他者との交流、関係によって生まれる「つながりの幸福」が「オキシトシン的幸福」。

 お金を得る、欲しい物を手に入れる、あるいは昇進・昇給といった仕事での成功など、何かを得たり達成したりしたときの喜びや幸せからくる「成功の幸福」が「ドーパミン的幸福」。

 精神科医の樺沢紫苑氏によると、3つの中で最も重要な基盤となるのは「セロトニン的幸福」で、幸福を感じるための優先順位はセロトニン的幸福→オキシトシン的幸福→ドーパミン的幸福になるといいます。

 ビジネスで全ての幸福を満たすのが理想ですが、関係性をリデザインするために私が特に重要だと考えているのは、他者との関係性から生まれる「オキシトシン的幸福」です。バドワイザーの「ビールは人々を集めるためのもの」は、まさにオキシトシンが分泌される環境を提供するビジネスと言っていいと思います。

ロボットが「戦闘」から「コミュニケーション」に

 オキシトシンが分泌される環境を提供するビジネスに変わってきているという意味で、分かりやすい例をあげるとロボット産業です。

 ロボットは、ある時期まで、人間ができないことをロボットに任せるという視点から「機能拡張」が目的とされてきました。要するに、人間の代わりをつくるのが目的だったのです。ひと昔前のテレビアニメの世界になりますが、「戦闘」という機能に特化した「マジンガーZ」や「機動戦士ガンダム」などはその最たる例です。現実の世界でも、工場の生産ラインや建設現場、介護の現場などで稼働している産業用ロボットは人間の代わりとなって働いてくれています。

 一方、「家庭用コミュニケーションロボット」として丸っこく愛らしい見た目で人気の「LOVOT」や、ペット犬のようなルックスで知られる「aibo」などは、機能拡張はしていません。搭載しているAI機能は進化していますが、LOVOTやaiboの目的は「癒やし」です。2019年に発売されたLOVOTは、柔らかくほんのり温かい、まるで生きているかのような錯覚を生むだけでなく、人に懐いたり喜んだりするしぐさまでするそうです。コロナ禍による外出自粛で、人々のストレスがたまる中、大きく売り上げを伸ばしました。

 LOVOTやaiboは、オキシトシンを分泌させるロボットです。機能拡張という視点に縛られていたら生まれることはなかったでしょう。

強くならなくていい。逆に弱いほうがいい、慈しみが生まれるほうがいい。視点が変わると、同じ産業でもそんな新しい発想が生まれてきます。

 自分たちは、どうやってお客さまを幸せにしてきたのか、これからどうやって幸せにしていくのか。3つの幸福と照らし合わせて従来の自分たちの姿を見つめ直すと、そこにお客さまとの新しい関係性を発見することができるはずです。

 それが、行き詰まっている現状を打破するためのアイデアになるのではないでしょうか。

著者プロフィール:藤田康人(ふじたやすと)

株式会社インテグレート 代表取締役CEO

1964年東京都生まれ。慶應義塾大学を卒業後、味の素株式会社に入社。1997年にキシリトールを日本に初めて導入し、素材メーカーの立場からキシリトール・ブームを仕掛けた。この結果、ガムを中心とするキシリトール製品市場はゼロから2000億円規模へと成長。2007年5月、広く日本企業のヘルスケア〜ウェルビーイングエージェンシー「株式会社インテグレート」を設立、代表取締役CEOに就任。現在、さまざまな媒体でウェルビーイングビジネスをテーマにした記事を連載し、ウェルビーイング エキスポ&カンファレンスや日本マーケティング協会などでウェルビーイングビジネスについての講演を多数行っている。


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