今回は貸借対照表の見方について説明しているが、風船会計メソッドでは損益計算書は風船に置き換えて表現している。売上高を風船で表し、営業利益をヘリウムガスで、費用を重りで表している。ヘリウムガス(営業利益)が増え、おもり(費用)が減った場合、風船は浮き、ヘリウムガス(営業利益)営業利益が減り、おもり(費用)が増えた場合は風船は沈む。風船で浮き沈みを見ることで、左脳で損益の状態が分かるようになるのだ。この風船を他社と比較することでも、自社と他社の状態が分かるようになる。
また、これを自社のセグメント別や製品別で表現するのも有効だ。エクセル上の数字ではなく、風船で表すことで、社員一人ひとりが何をすればいいかが明確になる。
「風船会計メソッドで状況が見えるようになると、社員たちが変わってきました。営業部はもちろん、これまで数字の意識の薄かった製造部でも、おもりの中の原価が減るように改善活動しよう、同じ機械でより多く作れるように加工技術を向上しようなどと考えるようになりました。また、経理・総務部では、みんなの頑張りが分かりやすくなるよう風船のイメージで業績を伝えようと考え、リアルタイムの決算書を全社員が見ることができる業績モニターアプリを経理社員が作りました。また、総務社員が製品1個単位で利益追求できるように、製品ごとの原価が一目で見られるアプリを作成してくれました」(松本氏)
松本氏がこの風船会計を作った目的は、組織で働く社員や経営者が皆幸せになることだという。社員が30人一気に辞めた際、「会社を続けるか、廃業させるか」悩み、松本興産は改革を選んだ。改革は仕組みや制度、戦略だけではダメで、もっとも重要なのは心を開くことだという。経営者が心を開くことで、社員たちの心理的安全性が保たれ、雰囲気も明るくなる。また、個人個人によって事象や数字に対する解釈が違うので、解釈を揃えるには共通した会計思考を取り入れるしかない。会計思考を用いて貸借対照表を理解することで、数値戦略が立体、ストーリーで理解できるようになり、数字を腹落ちさせることができるのだ。
「パーパス、数値戦略、会計思考がそろうことで、組織全体で視点をそろえることができます。組織で大切なのは、仕組みだけでなく、心を大切にし、会計思考を全社員に持たせることです」(松本氏)
松本氏は最後に「“変えられるもの”を変える勇気を、“変えられないもの”を受け入れる心の平静をそして、“変えられるもの”と“変えられないもの”を判断できる賢さを与えてください」という自身の好きな言葉を紹介。何も変えられないと諦めるのではなく、組織全体で変えられるものを探り、一つひとつ変革していく重要性を訴え、講演を終えた。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授