コンサルタントは恨まれて一人前――現場密着し、執念持て間違いだらけのIT経営(1/2 ページ)

IT経営コンサルティングは、あまり評判が良くないようだ。経営戦略・業務改革・IT導入などコンサルタントにはいろいろな分野があるが、かかわり方の基本姿勢はすべてに共通する。

» 2008年07月10日 09時18分 公開
[増岡直二郎,ITmedia]

乏しいIT部門の利用意欲

 古いデータだが、東証一部上場企業208社を対象に実施した「IT関連コンサルティング・サービス満足度調査」(「日経コンピュータ」2005.5.19)によれば、「(IT部門が)コンサルティング会社を利用したことがない」企業が48%と約半数を占め、そのうち「今後、コンサルティング・サービスを利用する予定がある」が26%と少なく、「利用予定はない」が29%で、「分からない」を含めると74%になる。一部上場企業以外も含めると,コンサルティング・サービスを利用する企業の割合はもっと下がるだろう。IT経営コンサルティングは、あまり評判が良くないようだ。この数字は今も大差はないのではないか。

 コンサルタントは、クライアント企業にどのようにかかわって行けばよいのだろうか。経営戦略・業務改革・IT導入などコンサルタントにはいろいろな分野があるが、かかわり方の基本姿勢はすべてに共通する。

 コンサルタントの基本的能力あるいは素質として、顧客の立場に立て、論理的であれ、洞察力を持て、コミュニケーションが重要だ、聞く耳を持てなどなどが列挙される。

 しかし、クライアントから求められて、しかも成果を挙げるための決定的な要素は何か。

ユーザーを圧倒する迫力で

 中堅の小売業A社は、CRMを導入するに当たって独立系ファームにコンサルティングを依頼した。派遣されたBコンサルタントは、一通りの聞き込みや現状調査をした結果、CRMを定着させるために業務改革が必要だとして、必要な手順を踏んで業務改革計画を作成して、早速改革を始めた。Bはすべてが手早く、A社の関係者はついて行くのがやっとだった。そしてBは厳しかった。例えば営業日報作成を習慣化させる準備として、手書きの営業日報を作成させた。

 あるいは、入力がシステムの生死を握ると言って、入力の癖をつけるために今までいい加減だった入力を、とりあえず旧システムで徹底させた。しかも、課した宿題に対するフォローアップは徹底した。宿題が未消化だったり、指示した業務プロセスを守らなかったりすると、Bは烈火のごとく怒り出した。「A社は、もう面倒を見切れない!」と、席を蹴ったことは数知れない。

 ゼスチュアと分かっていても、A社関係者はオロオロして、Bに従った。陰では、「Bが言ってることは、我々が日頃やろうとしていたことに過ぎない。言われなくたって分かってる」とか、「そんなに今までのやり方を否定されたんでは、責任を持てないよ」とか、ブツブツこぼしながらも、Bの鬼気迫る迫力に押されてBの指示に従った。A社の業務改革は、順調に進んだ。

 ITによる経営改革を遂行しようとすれば、旧業務プロセスを否定して新プロセスを導入しなければならない。それを成功させるためには、Bのような強引な手法が求められるし、旧業務に固執する関係者の反感は買うし、そして結果的に人員削減や配置転換につながって行く。コンサルタントは、恨まれて一人前だ。

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