連載
» 2017年09月14日 07時14分 公開

ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術:ビジネスに効く“憲法″〜本質思考と論理思考 (2/2)

[白川 敬裕,ITmedia]
前のページへ 1|2       

 政府は、美濃部達吉が執筆した憲法の本が、安寧秩序を害するとして、出版法19条によって発売禁止とし、さらに、天皇機関説を教室で教えることも禁止したのです。

 憲法の「論理」とは、「前提(=法の本質)に、事件(=天皇機関説事件)をあてはめて、結論(合憲か違憲か)を導くこと」を言います。

 明治憲法による結論【=合憲】と、今の憲法による結論【=違憲】が違うのは、前提となる法の本質が違うからです。すなわち、前提となる法の本質が変われば、論理的に導かれる結論も変わってくるのです。

3、憲法の「改正」

 憲法の本質を考えるうえで、格好の材料となるのは、自由民主党が2012年4月に発表した「(日本国憲法)改正草案」です(「改正草案」の内容・解説は、自民党のホームページに掲載されています)。

 憲法の「改正」というと、一般には、9条(つまり戦争放棄の部分)をどうするかについての論議と思われがちですが、私が「改正草案」を見て、いちばん違和感を覚えたのは、憲法13条の改正草案でした。

 先ほど、憲法の本質は、「基本的人権を保障することにある」と言いましたが、さらに本質を追究していくと、憲法の本質中の本質として、憲法13条に規定されている「個人の尊厳(=国民一人一人が個人として尊重されること)」に行き着きます。

 この「個人の尊厳」は、憲法学の授業で初めに学習する「憲法の根幹」です。

 その13条の「個人として」が、改正草案では、「人として」に変わっていました。いったい、どういうことなんだろう? そんな疑念をいだきながら改正草案を見ると、憲法の本質が、「国民の権利・自由を確保すること」から、「国家の形成・成長を確保すること」に変容していました。基本的人権の内容も、「人間が生まれながらにして持っている権利」から、「共同体の中で生成された権利」に変わっていました。国民主権も、「人類普遍の原理」から、「国の統治システムの一部」に格下げされていました。

 他方で、「改正草案」の“個々の”条項案を見ると、在外国民の保護、犯罪被害者などへの配慮、教育環境の整備など、今の憲法の本質に沿う規定もありますし、憲法9条の改正草案も、さまざまな議論はありますが、少なくとも、今の憲法の本質に反するものではありません。

 憲法の「改正」について、私たち国民の一人一人が「政治家」として正しい決断をするためには、常に「本質から考える」という姿勢が大切です。

 「改正草案」のなかで、何が“ヤバくて”、何が“ヤバくないのか”。そのことを考えるには、必然的に、憲法の本質を追究すること(=本質思考)、追究した本質を前提に論理的に結論を導くこと(=論理思考)が必要になります。

 憲法の「改正」について考えることで、ビジネスに効く本質思考と論理思考を鍛える……そのような意識で、ぜひ、モチベーションを高めて、憲法の学びに取り組んでほしいと思います。

著者プロフィール:白川敬裕

弁護士(東京弁護士会所属)原・白川法律事務所パートナー

東京大学法学部卒、ラサール高校卒。大学4年在学中に司法試験に合格。最年少(当時)の24歳で裁判官に任官。民事訴訟、医療訴訟、行政訴訟、刑事訴訟等の合議事件に関わる。民事保全、民事執行、令状等も担当。2003年 弁護士に転身。著書「ビジネスの法律を学べ!」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、「図解でスッキリ! 民法改正 重要テーマ100」(中央経済社)、「本物の勉強法」(ダイヤモンド社)、「会社の健康リスク対策は万全か」(共著 フィスメック)


前のページへ 1|2       

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

ピックアップコンテンツ

- PR -
世界基準と日本品質を極める Clients First with Innovation & Japan Quality

アドバイザリーボード

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆