いずれも関連会社の立場から見ると理不尽な出来事だが、親会社、子会社の関係やグループ会社の力学で考えると珍しいことではない。しかし、グローバルで変化の激しい市場環境の中で、このような旧態依然とした考え方が通用するわけがない。日本的経営の悪弊に執着していると、親も子もその悪弊にむしばまれて、会社をつぶすことになりかねない。
この際、化石のような親子関係とははっきり決別すべきである。今や子が自立しなければならない。親離れをするために、本業でグループ外からの受注を獲得し、外販比率を増やす努力をすべきだ。それが旧態依然とした親子関係を絶つ第一歩になる。
加えて、子会社は天下り人事を断る強い意志を持たなければならない。親会社で使い物にならなかった天下りの人材が子会社の主要管理職を占めるため、どれほど子会社のモラールは低迷してきたことだろう。天下り人事を毅然(きぜん)とした姿勢で断って、子会社生え抜きの人材を大いに登用しなければならない。親の言い分を必ず聞いて、無理にでも親の指示に従わなければならないという潜在意識をぬぐい去るのだ。
そうした強い姿勢の中から、関連会社は情報システムについても独自の考え方を持ち、自分たちにとって最適のシステムを構築しようとする考え方が生まれるのである。A社の場合は、グループ企業のソフトウェアファームに対して、最適と評価した他社システムについて説明し、優れた点をシステムに組み込むことを要求した上で、正当な価格を提示すべきだった。要求が受け入れられない場合は、グループ会社といえども発注しないことを主張すべきだった。
B社にしても、不要なものは不要だと言うべきだった。担当部門間で聞き入れられないときは、トップが動くべきだ。それでも難しいのであれば、不要なものを導入することによってこれだけ業績の足を引っ張るという、明確な裏付けを示しておくのが重要だ。
C社もD社も、全体最適を無視した我田引水のシステム統合である。どちらに有利という発想ではなく、新会社にとって有益なシステムはどうあるべきかという考えで打ち合わせを進めなければならない。
関連会社自身が旧弊を打破する自覚を持たなければ、事態は解決しない。関連会社の主張が正当であれば、親は耳を貸すべきである。
増岡直二郎(ますおか なおじろう)
日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
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明治学院大学 経済学部准教授