高いレベルに目を転じてみると、事業領域を大胆に変更する、またはビジネスモデルを見直すというコーポレートレベルのイノベーションが収益へのインパクトとして最大になるのだが、これらを自らのイニシアティブで行える企業は少数派である。取引金融機関などに追い込まれて主要事業領域からの撤退、売却、または同業他社との合併などに踏み切るケースが大幅に増えることも予想されるが、やはり多数派ではなかろう。そもそも新事業領域への大胆な転換は、確率論的に成功が難しい上に、強力なリーダーシップが不可欠なため、ハードルが高いのである。
「ビジネスモデルの見直し」もまた、その実現のハードルは高い。多くのケースは、インターネットのような共通プラットフォーム上に従来のモデルを移し変えるだけのものである。その場合でも、アイデアを事業化し、必要なリソースをそろえて試行するだけで、大抵は半年以上掛かってしまう。それで実際に成功するのは、100以上の事業プランのうち1つあるかないかである。
従って、戦略変更を踏まえて業務プロセスや組織改革といった全社的な仕組みを見直すか、継続的な業務プロセス改革の仕組みを確立するか、といった組織横断的な構造改革テーマ(図1の赤枠部分)にトップダウンで取り組むことが、意外と多くの企業にとって正しい解となるというのが筆者の見立てである。
前者に関しては、メーカーであれば、例えば製品ラインアップの見直しと並行して、プラットフォームの共通化、設計標準、部品共通化の推進とともに、設計プロセスの再改革を進めるであろう。または顧客選別を徹底した上で、上得意に対する要望の吸い上げ方式(プロセス、組織、ITとも)をまったく変えることで囲い込みを先鋭化することに活路を見出す企業(業種は限定しない)も増えるだろう。
後者に関しては、従来個別的なアプローチでしか見直しを進められなかった重要領域において、BPM(継続的業務プロセス改革)の導入によりシステマティックに改革を進める動きが表面化しよう。例えばメーカーや流通をはじめとする業種では、サプライチェーンを横断した領域での業務プロセス(金流、商流、情報流)を可視化、再設計した上で、受注から出荷のリードタイムなど、顧客が重視するKPI(重要業績評価指標)をモニタリングする仕組みを埋め込み、日常的な問題監視を進めながら継続的なレベルアップを組織的に進める企業が確実に増えるだろう。
もちろん、戦略変更を踏まえて、継続的な業務改革の仕組みを確立させようとする、両者の組み合わせが最も望ましいのはいうまでもない。
ちなみに、トップダウン・アプローチのあり方については、米大統領就任を間もなく控えたオバマ氏が非常に参考になる。彼は米国経済の戦略転換を促す政策ビジョンを発表した上で、放映時間が限られるテレビ放送のみならずPodcastやYouTubeなどにて、人々を自らの言葉で勇気づけている(ぜひ、その力強い口調を味わってほしい。でも本邦の首相と引き比べることはむなしい……)。これと同質のリーダーシップがあってこそ、大胆な収益構造改革も可能となろう。
BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)の検討の話は増えてきましたが、ハードルが高いのか、実施中の日本企業はまだ限られているようです。BPMに関する理論・手法やツール、事例等を紹介・解説して理解を進めていただくと共に、参加者の社内での推進のための課題とそのための方策を話し合う場としたいと考えております。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授