このような人材の整備に成功した情報システム子会社は、グループ企業に対して大きな貢献ができるようになるでしょう。ただし、これらの人材の育成は決して簡単なものではありません。
ITコスト面での負担増が限界になってきた場合や、人材の育成の見込みが無いと判断された場合、情報システム子会社を大手の専業ベンダーに売却し、そのベンダーからより高度で低コストのサービスを受けるといった選択肢も考えられますし、この傾向はこれから増えていくかもしれません。
正社員の雇用調整が難しい現実のもと、情報システム子会社で既存人材をすぐに削減したり、営業など全く違う業務に移行したり、いきなり企画職に移行させたりといった策は、よほどの窮地に追い込まれた場合を除き採用できません。また、本社の受け皿となっている雇用、処遇を切り捨てることも、実際にはできないでしょう。
ただし、魅力の無い会社は売れないという現実も存在します。今まで述べてきたようなアクションを取ることができない情報システム子会社を喜んで買うシステムベンダーは存在しないと考えられます。万が一、買い手が現れた場合、そのベンダーは自社へのアウトソーシングなどの発注をかなり有利な条件で行うことを最低限の条件につけてくることは間違いありません。
情報システム会社を変革するか、売却するかいずれの選択肢をとるにせよ、既存の人材から次世代を担える人材を抜擢し、適切なキャリアを積ませておくことが必要となってきます。また、既存の人材が歴史的に蓄積してきた有形無形のノウハウなども、グループ企業として継承しておく必要があります。
情報システム子会社を保持し続ける場合、トップマネジメントは、可能ならば情報システム子会社の中か、外部の専業者からIT企業経営の経験を有する専任人材を登用すべきでしょう。過去の「しがらみ」と決別するためにも、そうした率先垂範(そっせんすいはん)が非常に効果的なのは言うまでもありません。少なくとも本社の役員上がりのポジションといった位置づけを今後続けるのか否かは慎重に検討する必要があります。
中長期的なビジョンのないまま、積み重なった「しがらみ」に取り囲まれた情報システム子会社だからこそ、強い「本社」の力で支援し、仕組みを整備しなくてはいけません。ノウハウが人材に蓄積するように、グループ企業が総力を挙げて愚直にキャリア開発を進めることが求められています。
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京都大学大学院法学研究科修士課程修了後、米国系総合コンサルティング・ファームを経て現職。自動車、運輸、公共団体、電機、電子部品など幅広いクライアントにおいて、事業戦略から販売マーケティング戦略、オペレーション戦略、IT戦略など一気通貫での企業変革に向けた戦略策定・実行支援の経験を有する。特に 近年は新興国市場への展開、事業再構築などを手掛ける。地に足が着いた泥臭いコンサルティングが信条
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授