こうして、IT部門および関連スタッフの、合計約100名がソフトフォンに移行することとなった。構築作業は2010年12月から翌2011年1月末までの、約2カ月で完了。2月にはIT部門でのソフトフォンの利用を開始している。
また、IT部門以外にも、同年3月よりLyncのインスタントメッセージやプレゼンス機能の展開が開始されている。
「電話といっても、ソフトフォンはレガシーなPBXと違って、思っていた以上にライトな導入だった。なお、現状の環境では、ソフトフォンの音質が既存の固定電話より劣ることがあったり、相手によっては外線経由の通話となってコスト負担をかけてしまう場合があるなど、若干の注意点がある」と宮地氏は言う。
一方、初期投資としてはLync導入関連費用のほか、ソフトフォンを使うためのヘッドセットが必要となったが、一般的な内線電話機が1台あたり数万円するのに対し、ヘッドセットは数千円もあれば足りる。もちろんIP-PBXを設置したり、個々のデスクに電話用の配線をする必要もなく、ネットワークインフラの構築やメンテナンスも容易になった。Lyncソフトフォンの内線番号管理はActiveDirectoryに統合されており、社内で運用できることから運用面でも大きなメリットがある。
また、UCならではの利便性も実感している。
「例えば、プレゼンスが『会議中』となっている相手でも、急ぎの用件であればインスタントメッセージで『緊急』と伝えれば、しばしば迅速に返答を得られるようになった。また、震災直後の非常時などは、自宅からでも社内の対策会議に参加することができ、素早い対応に役立った」(宮地氏)
評価が難しいのは、生産性向上による間接的なコスト削減効果だ。インテリジェンスでは、今後の運用を通じて評価を進めていくとしている。
「生産性って何だろう、という根本的なところから問い直さないといけないのかもしれない。しかし連絡する相手を探す時間や、電話したものの通話中だったときの時間的ロス、また別の人が受けたときの取り次ぎに要する時間など、さまざまなところで時間が費やされている。こうした時間を、UC導入で仮に1人1日6分節約できるとすると、時給を2000円と安く見積もっても、200名利用想定なら毎月80万円程度、年間では960万円程度の節約となり、今回の投資額を1年で回収、という評価ができる」(宮地氏)
かなりの効果が期待されるソフトフォンの導入だが、3000名を超える同社の従業員のうち、現状ではIT部門の100名程度にとどまっている。インテリジェンスの今後のUC投資計画は、まだ始まったばかりだ。しかし宮地氏は、最初の一歩を踏み出せたことが、大きなポイントになると考えている。
「全社のコミュニケーション環境のような中長期に及ぶ大規模な投資プロジェクトには、多くの障壁がある。当社にとって、Lyncは既存環境と共存してスモールスタートさせることができ、段階的な投資効果シナリオを描けるといったメリットがあり、今回はそのメリットを享受できた」(宮地氏)
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明治学院大学 経済学部准教授