資源の適切な配分をできない経営者は、まず次のように考えを改めなければならない。
(1)経営者は、とかく「機会」ではなく「問題」に関心を向ける。重要なのは、「機会」だ。
(2)経営者は、「物事を適正に処理する」のではなく、「正しいことに取り組」まなければならない。もともとやるべきでないことを、いくら効率的に処理しても無益だ。大きな成果が予想される分野を特定し、そこへ集中することだ。
さて、以上の心構えのもとに資源の適切配分へいかにアプローチするかだ。
(1)まず、商品ラインを冷徹に「分析」しなければならない。
・その商品の真のコストは? (売上高比で一律配分した費用でなく、その商品の売り上げに実際に要した費用を把握しなければならない)
・経済的成果に大きく影響する、あるいは全社の業績が一変するほどの影響を与える分野は? 一方で影響がさほどでない分野は?
・諸費用は、適切に商品に賦課されているか?
(2)次に、資源配分の「優先順位」を決定しなければならない。
・その結果、「死期を迎えている製品」「落ちこぼれ製品」「あと少しで成功する製品」あるいは、「最後のチャンスを与えてくれ」「間接費を吸収する」などと訴えてくる製品などは、企業を消耗させる(前掲「DHBR」)。何があっても放棄すべきだ。
(3)最終的には「意思決定」と「実行」である(「知識」でも「洞察」でもない)。
・「優先順位の決定に関して本当に重要なことは、決定したことは断固行わなければならないということである。優先順位の決定と実行を苦しいものとして回避し、成り行きに任せるくらいならば、たとえ間違っていても自ら意思決定を下し、それを実行に移したほうが害はない」(前掲「創造する経営者」)。
・次は、実行のための具体的方法論の例である。
a. あらゆる商品・事業・活動について、2〜3年ごとに予算案もそろえながら、現行のまま継続すべきか否か吟味する。
b.「これにまだ手を付けていなかったら、今でも着手するか」と問い、手を引くとすればそのタイミングも自問自答する。
c.「あればよい」「できればよい」程度の配分なら、潔く諦める。
タイトルにあるごとく、スタートの瞬間から陳腐化が始まっているという認識を強く持ち、適切な資源配分について冷徹な眼と厳しい心を持って、常に自問自答しながら潔く意思決定・実行しなければならない。それができる経営者にのみ、将来が約束できる。
増岡直二郎(ますおか なおじろう)
日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。
その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授