情報は与えた人のところに集まる──キュレーショングローバル時代のスマートリーダー術――100人の経営層から(2/2 ページ)

» 2012年04月13日 08時03分 公開
[林正愛(アマプロ),ITmedia]
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情報は与えた人のところに集まる

 キュレーションをする際には、まず以下のようなことを明確にします。

  • どんなことに焦点を当てたいか(自社に役立つ情報とは何か)
  • オーディエンス(読者は誰か)
  • なぜキュレーションを行うのか

 これらについて最初に明確にするのが理想ではありますが、ある程度ざっくりと固めて進め、進めながら明確にしていくということでもいいかと思います。 その後、次のステップで行います。

1、見つける(find)

2、整理する(organize)

3、シェア(share)もしくは発表する(Publish)する

第1ステップ:見つける(find)

 自分が調べたいと思っているニッチなものに関連する情報を見つける。日々の新聞や気になるブログやニュースサイトを活用してもいいのです。気になるニュースがあったら、関連したブログを読んだり、検索してさらに情報を深堀するのもいいでしょう。

第2ステップ:整理する(organize)

 情報の断片を将来見つけやすいように整理する。これはこの分野の情報など、自分の中でカテゴリーを作り、それに沿って整理します。

第3ステップ:シェア(share)もしくは発表する(Publish)

 ある情報をただ伝えるでは意味がありません。人を介していることが大切で、聞き手が意味を理解しやすいように自分自身の意見や考えやコメントをつけたりするといいです。シェアする方法としては、前に紹介した経営者の方のようにメルマガという形でもいいですし、定例会議で述べたり、リポートを作り、関連する部署に配るということでもいいでしょう。

 なお、この3つのステップですが、1回やったら終わりということではありません。キュレーションはloop(輪)のようなものととらえると分かりやすく、常に知識を加え整理し、シェアし続けることが大切です。続けることで情報の関連性が分かったり、自社に役立つ情報が見えてきたります。

 また、与えた情報に対してすぐに反応が得られないかもしれません。ただ、情報は与えたところにしか集まりません。情報を与え続けることで思いもかけない情報が入ってきたり、ファンができたりするのです。

 「Give, Give, Give」が大前提です。

 ちなみに、わたしは書籍の編集をしていましたが、記者や編集者は常にキュレーションを行っています。ある情報を見つけ、それを読者が分かりやすいように整理して記事や書籍にする。あらゆる人が記者や編集者の視点を持つ必要があるのではないでしょうか。

必要なのは再定義

 ある経営者がいっていました。「モノがあふれる時代には、ゼロから新しいものを生み出すのは難しい。ただ、今あるものや技術の組み合わせを変えたり、すでにあるものを再定義することでイノベーションが生まれる」

 斬新な商品を生み続け、大ヒットを飛ばしているアップル。ただし、彼らが行っているのは「再定義」ではないかといわれています。iPodはウォークマンの再定義、iPhoneは携帯電話の再定義。ウォークマンは何なのか、携帯電話は何なのかを徹底的に研究し、情報を集め、整理し、商品開発に生かしていく。

 これに関しては、Shareの仕方が商品ということになりますが、これもある種のキュレーションといえるでしょう。キュレーションという考え方はコミュニケーションの現場だけでなく、いろいろな場所で利用が可能です。

 次回は「雰囲気作り」について話します。

著者プロフィール

林正愛(りんじょんえ)

BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ、ファイナンシャルプランナー、英検1級、TOEIC955点。津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。British Airwaysに入社し、客室乗務員として成田―ロンドン間を乗務。その後中央経済社にて経営、会計関連の書籍の編集に携わった後、日本経済新聞社に入社し、経営、経済関連の書籍の企画および編集を行う。2006年4月に退職し、「眠っている才能を呼び覚ませ」というミッションのもと、優秀な人たちが活躍する場を提供したいという思いから、同年10月にアマプロ株式会社を設立。仕事を通じて培ってきたコミュニケーション力や編集力を活かして、企業の情報発信をサポートするために奔走している。

企業の経営層とのインタビューを数多くこなし、その数は100名以上に達する。その中からリーダーの行動変革に興味を持ち、アメリカでエグセクティブコーチングの第一人者で、GEやフォードなどの社長のコーチングを行ったマーシャル・ゴールドスミス氏にコーチングを学ぶ。現在は経営層のコーチングも行う。コミュニケーションのプロフェッショナルが集まった国際団体、IABC(International Association of Business Communicators) のジャパンチャプターの理事も務める。2012年4月から慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科で学んでいる。著書『紅茶にあう美味しいイギリスのお菓子』(2000年、アスペクト)。2児の母。


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