マニュアルはどう作るかマニュアルから企業理念が見える(2/2 ページ)

» 2012年08月24日 08時00分 公開
[勝畑 良(ディー・オー・エム・フロンティア),ITmedia]
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マニュアルの4つの機能と3つの目的を確認する

 ここで重要なことは、企業はその業務を効率的に遂行するために、最適と信じた組織形態を維持している前提に立つということである。同時にシステムもまたその組織が都合よく動いていくように作られていることである。原則として、その経営システムは4つの機能を果たしている。

(1)企業の理念を実現するための機能である。

(2)経営戦略をに代表される経営のコンセプトである。

(3)戦術または制作レベルの業務を遂行させる機能である。

(4)これらに関連する作業レベルの行動手順である。

 この4つは相互に密接に関係している。しかも、それぞれの機能レベルは同じ次元で取り扱うことができない。従って、マニュアルも4つの機能レベルに応じて作成しなければならず、しかも相互に密接に関連づけられていなければならないという難問に挑戦しなければならないのである。マニュアルというと作業レベルの印象が強い。しかし、実際的には、極めて高度な政策的レベルでもマニュアルは用いられている。

 しかし、この政策的マニュアルは人目につかない。ある特定の階層にある人たちだけが用いている。このためわが国の企業で用いられるマニュアルは経営の意思決定機関と切り離されて存在することになる。こうして経営組織や経営システムと切り離されて、単独の作業マニュアルとしてしか機能していないところに日本のマニュアルの悲劇がある。この結果マニュアルは単純で、非人間的なツ−ルであるとの評価が確定されてしまっているのである。

 この4つの機能を果たすためにマニュアルは、その目的に応じて、「経営理念マニュアル」、「テキストマニュアル」「オペレ−ション.マニュアル」の3つに分けられる。

 理念マニュアルは企業理念と各部門との位置づけを明確にするマニュアルである。これは「なぜその業務があるのか、なぜ必要なのか」を記載している。そして、仕事への動機づけや意味づけ、仕事に対する価値観を確立することを目的とする。

 テキストマニュアルは研修用マニュアルである。仕事全体の内容を理解させる目的で作られる。これはマニュアルを通じて学習によって仕事の内容を理解していくために作られる。このマニュアルが社員の創造性を触発することが経験的には一番多い。

 最後はオペレ−ションマニュアルである。作業マニュアルといわれる場合が多い。これは作業の標準化を図り、だれもが企業の定めている標準を実現していくために作られる。作業者の熟練に要する時間や安全性維持の時間的労力を可能な限り節約し、作業水準を維持するために作られる

 マニュアル作成に当たっては、以上のような4つの機能レベルと3つの目的を十分勘案しつつ進めていかなくてはならない。作成途中で何度もこのスタ−トラインに立ち戻り、考察を重ねることが成功の秘訣である。

著者プロフィール

勝畑 良(かつはた まこと)

株式会社ディー・オー・エム・フロンティア 代表取締役 

1936年東京生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、1964年にキャタピラー三菱(株)に入社。勤労部、経営企画部、資金部を経て、1986年、オフィス・マネジメント事業部長としてドキュメンテーションの制作、業務マニュアルの作成、語学教材の発行などさまざまな新規事業に取り組み、1992年4月、業務マニュアルの制作会社である(株)ディー・オー・エム(現在:株式会社ディー・オー・エム・フロンティア)を設立し、代表取締役に就任。「いま、なぜマニュアル革命なのか?」(『企業診断連載』)で平成2年度日本規格標準化文献賞<最優秀賞>受賞など論文多数。


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