まずデータを活用する上で、十分に理解しておきたい2つのポイントから説明します。
1つ目は「データを読む原則」について。正しいデータの読み方は、ある一時点の状態を読むのではなく、同じ数字項目の変化を読み続けることです。たまにデータ分析のミーティングの度に、ある一時点での不特定の数字項目をたくさん提示して論を進める方がいますが、それではあまり意味がありません。果たして数字は動いているのか。増える傾向にあるのか、減る傾向にあるのか、どの方向に流れているのかが重要なのです。ですから、ある一時点での100個の数字項目を挙げるよりも、1個の数字項目を追い続けて傾向を読む方がはるかに価値があるわけです。
2つ目は「データを読む目的」について。データ分析をする目的は、「現状把握」と「成果分析」の2つです。現状把握は、事業全体や部門の状態を把握し、次の課題を見つけるための道具としてのデータ分析、という定義。成果分析は、事業に対して行った施策が、どの成果ポイントに結びついたかを知るための道具としてのデータ分析、という定義です。データ分析は、現状把握の中から施策を決定・実行し、その後に施策の成果分析と現状分析をして次の施策を決定・実行、ということの繰り返しです。ここでも「データを読む原則」のとおり、数字の変化を読み続けることが重要になります。
データを活用し、マーケティングを行うにあたって、到達すべき情報は、「どんな人が、どんなタイミングで、どんな商品(コンテンツ)を利用したか」です。
まず「どんな商品を利用したか」を集計し分析することからスタートしましょう。利用履歴データの分析は、マーケティングの基本です。商品利用についての、「商品別利用数」「商品別利用者数」「商品別売上高」の3つのデータを週次・月次でシートに吐き出し、数字の動きを読みます。商品にカテゴリのタグを付けている場合は同様に、「商品カテゴリ別利用数」「商品カテゴリ別利用者数」「商品カテゴリ別売上高」を定期的に分析します。これがデータ分析の一歩目です。
ここで数字の動きを読みやすくする具体的なポイントを伝えます。それは「1シート、1テーマ」の原則です。一枚のデータ分析シートについて、その分析結果を読むテーマは1つに絞らなくてはいけません。つまり、同じ商品分析でも、「利用数を読むシート」「利用者数を読むシート」「売上高を読むシート」は全て別のシートにするということです。例え同じデータ分析シートで確認できたとしても、「利用数」「利用者数」「売上高」各々で降順にした3つのシートをつくることによって、より数字の読みが深まります。数字が得意な方は複数のテーマでもデータを読めますが、チーム各人で読む場合、確実に全員の理解が深まるよう「1シート1テーマ」の原則に基づいてください。
次に「どんなタイミングで」の分析です。この「行動履歴」についてのデータ分析は「アクセス履歴」が取得できるWEBビジネスだからこそ可能な概念であり、リアルビジネスではなかなか取得できない情報ですので、データのハンドリングを上手にできれば大きなアドバンテージになります。まず分析したいのは「時間帯別」の利用履歴でしょう。「時間帯別利用数」「時間帯別利用者数」「時間帯別売上高」に加え、「時間帯別アクセス数」の動きを読んでいくと良いです。また、「タイミング」を深く読む上で、同時利用の関係性や利用のサイクル、サイト回遊履歴、参照元履歴の分析などもあります。
最後に「どんな人が」の分析です。つまり顧客属性データです。この情報をいかに取得し、どう分析するかが最後の勝敗を分けます。WEBビジネスの世界は、顧客が主体の世界です。顧客が欲しい情報やサービス、商品「だけ」をジャンプしていきます。たとえWEBサイトをオープンしていても、顧客のニーズがなければ存在価値がないわけです。顧客のデータとして取得し、分析したいのは、「住所」「性別」「生年月日」などのいわゆる個人情報。できれば取得したいのは「趣味嗜好」ですが、ここは顧客がおいそれと入力してくれるわけではありません。顧客の「趣味嗜好」を知るための仕掛けを作るか、もしくは利用履歴と行動履歴を組み合わせることで、顧客属性のセグメントを想定していくことになります。こちらについては最終回で詳しくお話しします。
今回はWEBビジネス成功の秘訣である、「専任」と「データ分析」について説明しました。データの活用をより深堀し、成果のポイントを絞ることで、一つひとつ仕事の精度が変わり、先んじて成功に近づけていくことができます。大切なのは、自社のサービスを「どんな人が、どんなタイミングで、どんな商品を利用したか」、データを使って愚直に追い続けることです。
それでは、次回の最終回では、データの組み方とマーケティング分析法、そしてデータ分析において最も重要なポイントについて話します。
石田 麻琴
早稲田大学第一文学部卒業後、インターネット通販ベンチャーに6年間勤務。ネットショップ店長として、1年間で売上7000%アップ、年商3億円を実現。ヤフーショッピングカテゴリ第一位を獲得。インターネット通販を中心としたマーケティング支援/マーケティング人財の育成を目的とした株式会社ECマーケティング人財育成を設立。有力EC/Web企業を支援。船橋情報ビジネス専門学校特別講師など人材育成にも注力。その他、商工会議所での講演、新聞やWebでの連載など。BPIAのWebビジネス研究会ナビゲータ。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授