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» 2013年08月21日 08時00分 公開

プレイングマネジャーが持つべきビジョン新時代のプレイングマネジャー育成法(2/2 ページ)

[上林周平(シェイク),ITmedia]
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「やるべきこと」に対して「本当に」自分の頭で考えているか

 先日、30代(マネジャーになる前)の人たちへの育成プログラムで、「自分の部署は何のために存在していますか。必要がなければ存在しないはず。存在している目的を記載してください」という問いに対して、ペンが全く進まず、「このようなことを考えたこともなく仕事をしてきて、今まったく思いつかない。それがショックである」との発言があった。

 カリスマの創業オーナーがいる会社で、上から言われたことに対して何も疑問を持たずに、ひたすら対応していくことを今まで行っていたようだ。その結果、ただの作業者になっていた。

 また、別のある大手企業の30代、40代の人たちに行った育成プログラムでは、初めに現状の組織の問題を洗い出すと、「会社の戦略が曖昧だ」「経営陣がイマイチだ」というような不満が多数あがった。その後、彼ら自身にさまざまな議論を通じて、会社戦略を一から練り上げて具体化してもらった。そこで出来上がった結果を見ると、自分たちが具体化した戦略は、会社が掲げている方向性や戦略とほぼ同じものになっていた。

 会社に戦略がなかったわけでも曖昧であったわけでも、経営陣がイマイチだったわけでもない。結局自分たちが自分の頭で考えていないため、上の掲げる方針に対して、なんとなく共感・納得できずに、他責になってしまっていた。そのような状態で自組織のビジョンを掲げたとしても、本質的なビジョンになるはずはない。まずは、自分の頭で考える。それは、どのようにするのか(How)だけでなく、広い視野を持って、なぜやるのか(Why)、何をやるのか(What)を考えるということだ。それを踏まえて、自分がマネジメントする組織の「やるべきこと」を明示する。目的をとらえたビジョンを掲げるためには、自らWhyやWhatまで考えることが重要だ。

 しかし、多くの人は、日々の忙しさに忙殺されて、自分の頭で考えているつもりが、結果的には流されているという状態になっている。前述の30代、40代の人たちも、大企業の最先端な部署の中で、さらに選抜された中核メンバーであった。日常考えていると自負していた人が、Howだけを考えて、「考えているつもり」になっている。このプログラム後、今まで以上に当事者意識を持って、前向きに自組織を推進していることこそが、今まで考え切れていなかった証拠でもある。

 では、皆さんは、 「やるべきこと」に対して、視野を広げて、WhyやWhatまで自分の頭で考え、納得しているだろうか?

ビジョンを掲げる上での3つのポイント

 自組織のビジョンを掲げるにあたり、自分の頭で考えることが大事だと述べた。それ以外に必要な点を含め、ポイントを3つにまとめた。

(1)対上(周囲から求めらること)の観点

 1つ目は、「上から与えられた目標ではなく、自分の頭で考え抜いたビジョンであるかどうか」。

 前述のとおりであるが、与えられた目標をただ受け止めるのではなく、自分の頭で考え、本来的な目的も押さえながら、何を実施していく必要があるのかを自分で語れるようになることが大事である。特に忙しくて日々追われている、仕事に慣れてきてこなすように仕事をしている、漠然と上の方針に不満がある。これに当てはまる場合は忙しいとは思うが、今一度、自分の頭で考え抜いて、ビジョンを設定してほしい。

(2)対下(部下への伝達)という観点

 2つ目は、「部下にやるべきことを伝えるではなく、部下の力を引き出すビジョンであるかどうか」。

 ビジョンは伝えるためだけにあるものではなく、伝え、理解・共感し、各人がその方向性に対して力を最大限発揮するためのものである。自部署のビジョンに対して、部下から見るとどのように感じるか確認してほしい。理解はできるか? 共感できるか? 自分の力を最大限発揮したいと思えるか? そういう問いを何度も投げながら、ビジョンを精査してほしい。

(3)自分という観点

 3つ目は、「やらねばならないビジョンではなく、自分が成し遂げたいビジョンであるかどうか」。

 マネジャーというポジションになると、マネジャーとして「これをやらなければならない」「こうあらねばならない」というような「ねばならない」が増えてくる。もちろん必要なことなのだろうが、"ねばならない"と思っているだけのビジョンでは、周りの人は心からは動かず、自分自身もモチベーション高く行動し続けることは難しい。

 自分は何を大事にして働いていて何を成し遂げたいのか、それを改めて考えてみる。その上で、今いったん掲げてみたビジョンに自分は100%同意しているか、何があれば心から「やりたい」と思えるか、何がブレーキになっているのかを自問自答し、自分自身の力を引き出せるビジョンになるように見つめてほしい。

 先ほどの消防署の「そもそも火事が起こらない状態を作る」のように、自分も周りもより良い状態になるために、自組織のビジョンと上記3つのポイントが合致しているかどうか、改めて確認してほしい。

 今回はプレイングマネジャーとして持つべきビジョンの3つのポイントと、(1)対上(周囲から求められること)について述べたが、次回は(2)対下(部下への伝達)、(3)自分という観点でさらに詳しく考えていきたい。

著者プロフィール

上林 周平

株式会社シェイク 取締役

大阪大学人間科学部卒。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。主に業務変革などのコンサルティング業務に携わる。2002年シェイク入社。各種コンサルティング業務と並行し、人材育成事業の立ち上げに従事。その後、商品開発責任者として、新入社員から若手・中堅層、管理職層までの各種育成プログラムを開発。また、2004年からはファシリテーターとして登壇し、新入社員から若手・中堅層、管理職層まで育成に携わった人数は1万人を超える。2011年9月より取締役就任。

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