いかにデータを読み、実務に落とし込むか――人を育て、データを見て、毎日改善するITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(2/2 ページ)

» 2013年08月28日 08時00分 公開
[山下竜大,ITmedia]
前のページへ 1|2       

なぜ女性が60%、A新聞が30%なのか

 あるショッピングモールで、顧客の60%が女性で、A新聞の購読率が30%だったとする。しかし女性の割合が60%だから女性誌に広告を出せば良いというものでもなく、A新聞の購読率が30%であるからA新聞に広告を出せばいいわけでもない。

 「そもそも、なぜ顧客の女性が60%なのか、A新聞の購読率が30%なのかということを考えなければ、次の戦略を練ることはできない。データを収集しても、それが施策につながるデータでなければ意味はない。そこで"データを読む"ということに大きな需要がある」(石田氏)。

 データを読むためには、KGI(重要目標達成指標)とKPI(重要業績評価指標)の徹底理解が重要になる。「KGI、KPIという言葉の定義はともかく、成果と成果につながるポイントを押さえることが重要だ」と石田氏。

 そして「成果ツリー」が有効になる。ネットショップで例えると、成果ツリーの頂点に、成果となる「売上」があり、成果を上げるポイントとして、「アクセス人数」「受注件数」「転換率」「客単価」を算出する。

 次に、KPIに影響している数値を項目別に因数分解し、優先順位の高いアクションKPI数値へのアタックがアクションプランとなる。石田氏は、「データはある一点を見るのではなく、継続して見続け、変化を見なければならない」と言う。

 つまり、女性が多い、A新聞が多いというのは、現状分析であり、その成果の要因を分析することが必要である。石田氏は、「可能であれば、経営層だけでなく、スタッフ全員が成果を分析し、今日やるべき仕事を把握できる体制を確立してほしい」と話す。

 市場に対して投げるボールが施策であり、跳ね返ってくる音がデータ。1度ボールを投げて、返ってきた音を聞いて、もう少し右とか、上とかを判断し、またボールを投げることを繰り返す、データと施策を繋げられるようにするためには"的当てゲーム理論"が有効になる」(石田氏)。

 成果分析では、「実践することを決める」「実践する」「データで成果を検証する」「成果のポイントを発見する」という、PDCAサイクルのような取り組みを繰り返すことである。そのためには、データ活用を理解できる人材を育成しなければならない。

 データを読むためには、以下の5項目を最重要業務として、365日毎日続けることからスタートするのがよい。

1.成果の指標となる項目を3〜5項目あげる

2.毎朝、その項目の数字を全員が各々のExcelに入れる

3.前日行った施策を書き出す

4.チームで集まり、10分間、昨日の数字について話す

5.昨日の数字になった理由を書き出す

 石田氏は、「"なぜそうなったか"が分かれば、"どうすればそうなるか"を知ることができる。成果につなげるためのポイントは、施策を実行すること、分析を継続すること、人を育てることの大きく3つになる」と話している。

人材を育成し、データを見て、毎日改善

 データ活用の未来として、ワン・ツー・ワンマーケティングが注目されている。ワン・ツー・ワンマーケティングは、これまでも行動履歴とデータにより行われてきたが、今後はビッグデータ活用や開発環境の整備、行動履歴データが重要になる。

 「スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスの普及拡大により、いつでも、どこからでもネットショップにアクセスすることができるようになった。そこで行動に対するリアルタイム性はさらに重要になる」(石田氏)。

 またカスタマーエクスペリエンスの最大化も重要なテーマの1つ。ある商品を好きだから3回買ったのか、ほかに選択肢がないから3回買ったのかは購入回数だけでは分からない。そこでレビューや口コミの情報をひもづけた満足度調査が有効になる。

 リアルマーケティングのWeb化も重要。例えば顔認証システムを使うことで、リアルの店舗においてもユニークユーザー数やリピーター数、誰がどのタイミングで買わなかったかといったデータを取れるようになる。

 さらに無償のカレンダーサービスを提供することで、誰が、いつ、どこで、何をするかを把握することができ、行動予測データを取ることもできる。さらにリアルの広告の成果を検証することも可能になる。

 石田氏は、「テクノロジは進化するが、最終的に判断するのは人間。現状、システムとマーケティング、オペレーションは別々に行われているが、今後はこれが1つにひもづいたサービスになり、それを使いこなせる人材を育成し、データを見て、毎日改善することが重要になる」と話している。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆