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» 2017年10月19日 07時19分 公開

ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術:AI時代こそ地頭力を鍛える (2/2)

[細谷功,ITmedia]
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何が問題でどうすべきか?

 それでは、チェックリストの各項目の何が問題で、どうすべきなのかを考えてみましょう。繰り返しになりますが、このような人材が優秀でないと言っているのではなく、冒頭で述べたような変革が必要な場面では、このような価値観がマイナスに働き、思考停止を促してしまっている可能性があるので要チェックということです。

1、チームワークが得意である

 チームワークは仕事で最も重要なことの1つといえますが、同時に思考停止のわなも潜んでいます。「自ら能動的に考える」ことは時にチームの輪を崩すことにつながるかもしれません。斬新な発想はときに「ちょっと変わった個人」から生まれ、なおかつそれは多数派からは否定されます。従って、考える文化を大事にしたいのなら、個人にスポットライトを当てるのも1つの方向性です。

2、上司や顧客からの指示や依頼は確実に実行する

 どの業界でも、日本企業が同業の外資系企業に比べて強調するのが「顧客の要望にきめ細かく応える」というものですが、これもくせ者です。(悪い意味での)「顧客の言いなり」になりかねません。顧客の声を丹念に拾ってそれに1つ1つ対応していくのが有効なのは、事業や商品・サービスが比較的安定期に入って「改善」が必要な場面です。「顧客の言われた通りにやる」というのは「上司の言いなり」というのも同様です。「イエスマンはよくない」と一般論で語るのは簡単ですが、人間誰しも自分に賛成してくれる人を回りに置きがちです。部下に「自ら考えろ」といいながら、結局最後は自分の意見を押し通していては自己矛盾の塊になってしまうでしょう。

3、恵まれない環境でも必ずその中で最善を尽くす

 「与えられた環境下でベストを尽くす」ことも重要ですが、「自ら考える」というのは、そもそも与えられた環境や、そこにある前提そのものがいいのかを疑ってみることです。「顧客から言われたこと」や「上司から言われたこと」も環境や前提といえます。それを疑わずにその中でベストを尽くすのではなく、そもそも違うやり方で依頼主の「本来の目的」を達成するための発想は、思考回路を起動できるかに深く関わってきます。「そもそも……」というのが自ら考えるキーワードになります。

4、規制やルールなどの決まりごとを順守する

 規則を守ること、前例を踏襲すること、業界の常識を重視することは今までの延長線上でビジネスが円滑に進んでいるときは重要です。ところが、変革期においてはそれまでの規則、前例、常識を疑ってかかる必要があります。そんな場合に、あえて規則順守の原則そのものまで疑ってかかれるかは、思考回路を起動するために非常に重要です。規則そのものを変えてしまうことが前項の「そもそも論」にも通じます。

5、仕事にも日常にも不満が少ない

 不満は常に新しい発想の源です。「不満もいわずに黙々と働く」というのは日本人の美徳の1つかもしれませんが、イノベーションは常に不便なものの改善から生まれます。日常で不満がない人は思考が起動しません。不満を前向きに変えることで思考回路が起動しますから、むしろ不平不満を逆手に取ることも、自ら考える文化を醸成する上で必要になってきます。

(1)常に新しい提案ができる人

(2)言われたことを着実にこなす人

(3)不満ばかり言っている人、

 会社では(1)(2)(3)の順に評価されますが、(2)の人が(1)に化ける可能性よりも、(3)の人が(1)に化ける可能性の方が高いのです。

6、始めたことは必ず最後までやり抜く

 自ら考えるために非常に重要なことの1つに、未知のものへの知的好奇心があります。知的好奇心の強い人は往々にして「飽きっぽい」人が多いのは事実です。新しいことへの興味がある人は同じことを繰り返すのが苦手です。「継続は力なり」は確かに重要ですが、考えることにおいては、「常に変化し続けることを継続する」が重要ですから、単に同じことを継続するのは思考停止にもつながっていきます。

 「同じやり方」(以前と同じとか他人と同じとか)は一通りですが、「違うやり方」は無限の可能性があります。常に「もっとよいものはないか?」と自問自答し、必ずしも一度始めたことをやり抜くのを最終目標としないのも、自ら考える企業文化を醸成する上で重要になります。

 「AIの時代」に、特に重要度が増してきた「自ら能動的に考える力」としての地頭力について、まずは「思考停止」から抜け出して考え始めるにはどうすればよいか、そしてそれを組織として実行していくにはどのように取り組めばよいかについての観点を整理してきました。

 組織としては、もしかするとこれまでの価値観を逆転させなければならない場面が増えるでしょう。経営者やリーダーとしては、新たな価値観が評価される場を作っていくことで、部下や社員の自ら考える力を向上させる必要があるのではないでしょうか。

著者プロフィール:細谷功

ビジネスコンサルタント。株式会社クニエ コンサルティングフェロー。東京大学工学部卒業。東芝を経てアーンスト&ヤング・コンサルティングに入社。製品開発、マーケティング、営業、生産などの領域の戦略策定、業務改革プランの策定・実行・定着化、プロジェクト管理を手がける。著書に『地頭力を鍛える』『問題解決のジレンマ』(以上、東洋経済新報社)『具体と抽象』(dZERO)などがある。


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