「部下を育てるときには、できるだけ大きなアイスバーグにしようという思いが重要になります。チームがどれだけの成果を上げられるかは、リーダーの器(アイスバーグの大きさ)にもかかっています。つまり成長とは、自身のアイスバーグを大きくすることでもあります。アイスバーグを大きくするためには、ムダなブレーキを取り除き、信念のアクセルを踏み込む、成長マインドセットが必要になります」(吉田氏)
一般的に、リーダーに必要なスキルセットは、役職が低いほどテクニカルスキルが必要な割合が高く、役職が高くなるにつれ、ヒューマンスキル、マネジメントスキルが必要な割合が高くなる。また現在では、全ての役職において「コンセプチュアルスキル」が求められる。昔の生産現場などでは、現場の担当者は、マニュアル通りに一定程度作業できることを求められたが、現在は状況に応じた改善や革新が現場の担当者にも求められる。
また、別の側面でリーダーに必要なスキルセットとして、リーダーシップやフォロワーシップ、戦略立案力も求められる。ここにはアイスバーグモデルの成長マインドセットがより必要になる。吉田氏は、「一般的に企業では、収益や実績が最重要KPIになります。その収益や実績を出すためのスキルや仕組みにフォーカスしがちですが、マインドセットにも注力している企業は、まだまだ少ないのが実情です」と話す。
例えば、社員が働く際の動機は大きく4つに分けることができる。目に見える/見えない報酬の軸と自分、家族のため/他者のための軸の2軸で考えると、「目に見える―自分」のためのものは「給与や昇格」であり、「目に見えない―自分」のためのものは「やりがいや自己成長」である。一方、「目に見える―他者」のためのものは「仲間の昇給、昇格」であり、「目に見えない―他者」のためのものは「仲間の成功や顧客の繁栄」である。この4象限上に、矢印のサイズや長さを変えて、何のために働くのかを表すのが4つの動機矢印である。
「若いときや役職が低い間は比較的右側の矢印が多いのですが、成熟したり、部下ができたりすると左側を向いた矢印が大きくなる傾向があります。左向きの矢印が大きいリーダーのほうが、部下が信頼してついてくるし、自分の人生が豊かになるのではないでしょうか。この左側の矢印とアイスバーグモデルの底辺の(3)意識、思い、人生哲学は共通するものが多く、リーダーの動機矢印とアイスバーグの底辺の部分は組織マネジメントでもとても大事な部分だと思います」と話す。
「スキルはもちろん大事ですが、それと同等かそれ以上に“想い”は重要です。スキルだけでなく、なぜその仕事を、どんな想いを持ってやっているのか。会社の業績は当然重要ですが、短期だけでなく長期的にも成長していくためには、社員一人ひとりが自分の人生のオーナーシップや当事者意識、覚悟を持っていること、そして、自分と部下がなぜ仕事をしているのか、4つの動機矢印で再確認して、部下への想いや愛情のある正しいマインドセットを持って正対することが、リーダーの組織マネジメントには重要なことなのです」(吉田氏)。
2018年4月に「成長マインドセット −心のブレーキの外し方−(クロスメディア・パブリッシング)」が書籍化されている。吉田氏は、「個人の成長の可能性を広げたい、好ましくないブレーキを踏んでいる、人生や仕事の目的を見いだせていない、自分の軸がなく迷走しやすい、部下の安易で無駄な転職をなくしたいと感じている人は、是非一読してほしい」と締めくくった。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授