人材派遣会社B社では、以前労基署の調査で過半数代表者の選出方法が適切でないことを指摘されたのを機に、PCやモバイル上で全労働者が投票できるクラウドシステムによって過半数代表者を選出するルールを構築しました。
派遣労働者の場合は、派遣中の労働者とそれ以外の労働者を含む全ての労働者が選出の母数となるため、仕組み化によってより確実にコンプライアンスが守れるようになったといいます。
直接雇用の労働者であっても、パートタイマーやアルバイトが1カ所に集まって選挙を行うことは困難なことが多いため、一つの取り組み例として参考にしたいものです。
(3)給与の支給要件を明確にし、あいまいな「手当」をなくす
同一労働同一賃金(不合理な待遇差の是正)は、2020年4月(中小企業は2021年4月)から施行され、正社員と非正規雇用との待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止されます。
同一労働同一賃金については、2018年6月のハマキョウレックス事件の最高裁判例などが、リーディングケースとして知られます。この裁判では、正社員と契約社員の手当を巡る争いについて、皆勤手当以外の手当が軒並み「不合理」だと判断されました。
運送会社C社では、10人ほどの契約社員のドライバーが在籍していましたが、契約期間が異なる以外は、正社員と大差がない業務を担っていました。ところが、実際には歩合給、無事故手当、作業手当、住宅手当、皆勤手当などが正社員のみに支給されていました。
この点に不満を持った契約社員の一人から、個別労働組合(ユニオン)を通じて団体交渉の申し出がありました。「あいまいな手当は労働者も会社も不利益になる」という専門家からのアドバイスを受け、同社では手当を含めた給与の見直しを行っているといいます。
同一労働同一賃金については、新たにルール化される労働者の待遇に関する説明義務への対応も不可欠です。今後は、パートタイマー、契約社員、派遣労働者の雇入時などに、不合理な待遇差があるかどうかを判断するために待遇情報を伝えなければならなくなります。
正社員との労働条件の違いについて洗い出し、差を設けている理由について合理的に説明していくことが大切となっていくでしょう。「働き方改革」のそれぞれのテーマについて、今後の実務対応や企業が背負うリスク対応について万全を期していきたいものです。
社会保険労務士法人ナデック代表社員。特定社会保険労務士。特定行政書士。国家資格キャリアコンサルタント。経営法曹会議賛助会員。派遣元責任者講習講師。
1973年三重県生まれ。20代の転職人生でアルバイト、派遣労働者、契約社員、正社員、会社役員など、さまざまな立場を経験して2002年に独立。労働基準法や労働者派遣法などの法改正や「働き方改革」対応に強い社労士として、実務対応および情報発信に取り組む。生まれ育った鈴鹿市に事務所を構えつつ、特に派遣法分野では東京・名古屋・大阪などでも日常的に活動。経営者団体や大手企業での講師も務め、新聞・雑誌の取材実績も多数。
著書は、『トラブルを防ぐ!パート・アルバイト雇用の法律Q&A』(同文舘出版)、『改訂版 人材派遣・紹介業許可申請・設立運営ハンドブック』(日本法令)、『駆け出し社会保険労務士さんのための実務の学校』(翔泳社)など10冊。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授