初期段階で取り入れたのが「ITお困り事相談チャネル」です。ITツールについて困ったことを質問し、分かる人が気軽に答えていくことでスレッドが履歴として残る。その履歴の蓄積は検索して読むことができるので、他の人の役にも立つというものです。
このチャネルには私もとても助けられています。誰かが困っているときにこのチャネルの中から当てはまるスレッドのリンクを送れば、それで解決してあげられるというのもとても便利です。
マニュアルとなると、自分の知りたいことを見つけるのはなかなか大変ですが、こうしたチャットで1問1答のような形で残しておけば、知りたいことをピンポイントで調べられます。誰かを助ける感覚でモノがつくられていく。こうした善意のコラボレーションが生まれるメタバースの在り方が私はとても好きです。
「社内カルチャーを変える!」というと、なんだか大それたことに感じるかもしれません。「役職もついていない若手の自分に何ができるだろう?」そんな不安を持つ人もいるかもしれません。ですが私は、メタバースを含めたデジタルテクノロジーによって「ボトムアップ」の可能性が大きく広がったと感じています。
あなたがもし「ボトムアップ」で何かにチャレンジするときは、「スポンサー」を見つけることも大切です。ここでいうスポンサーというのは、お金を出してくれる存在というよりも「あなたのチャレンジに共感してくれる幹部クラスの人」を指します。
私はRidgelinez のリーダーだったので、「Slack導入」の場合は自分がスポンサーとして動きました。スポンサーとして社内の人に「僕はもうメールを使わないからSlackにしてね」と伝え続けていると「佐藤さんはSlackだったらすぐに話せるよ」とみんながいい出して、徐々に社内全体でもSlackが浸透していったのです。
さらに、デジタルテクノロジーはトライ&エラーが容易です。最初から莫大な費用をかけてツールを導入するとなれば、リスクも責任も大きくなってしまいますが、Saas型のサービスであれば無料で試せるプランが豊富です。
私もSlackの導入は、人数が限定された無料プランからテスト的に始めました。コストをかけずにチャレンジできれば、ボトムアップで組織を変えるチャンスも増えるでしょう。どんどん試して、本当にしっくりくるものを見つけてみてください。
上から指図されるのではなく、自分たちが本当にいいと思う環境を自分たちの手でつくっていけたら、会社はもっとおもしろくなります。ぜひあなたも、スポンサーになってもらえそうな人を口説いてチャレンジしてみてください。
Slackを導入して2年ほどがたち、私がおぜん立てをする必要もなく、ああしたい、こういう風に使いたいと、自主的にSlackを使ってくれる人が増えました。
同時に、定着するに従って投稿に関するクレームが入ることも出てきましたが、できる限り当事者が自主的に解決するようにお願いをして、大きな問題になりそうなときはSlack導入にかかわったメンバーが事務局として対応しています。
「仕事始めにはまずSlackをつなごう」という共通の感覚が定着し、メールを使っていたころに比べてコミュニケーション量は格段に増えています。Slackからどんな化学反応が生まれるのか? 今後がとても楽しみです。
今回はSlackを例に紹介しましたが、Slackに限らずデジタルテクノロジーは「思い立ったらすぐに、自分の理想に合わせて、立場を超えたコミュニケーションを可能にする」手助けをしてくれます。
もしデジタルテクノロジーに苦手意識があればエバンジェリストチームを立ち上げて得意なメンバーに協力してもらったり、部下が何かチャレンジしたそうであればスポンサーになってあげたりしながら、コミュニケーションの円滑化に活用してみてください。
Ridgelinezシニアアドバイザー。ブロックチェーンベンチャー Digital Platformerアドバイザー。東京大学経済学部卒業。ニューヨーク大学経営大学院スターン校卒業。約25年にわたり、通信業界において放送と通信の融合や、モバイルペイメント事業、アジアでのJV運営などの新規事業立ち上げに関わる。NTTドコモの海外子会社CEOを歴任後、日本本社のマネージング・ディレクター、グローバル・パートナーシップ&イノベーション責任者として、NTTドコモが手掛ける世界中のZ世代に寄り添うVTuber「Tacitly」運営などに携わったのち現職。身近な事例をもとにしたメタバースの概念を研究しており、メタバースがひらくwell-beingなスマートシティ、新たな時代のコミュニケーションの在り方、Web3のもたらすパラダイムシフトに関する発信を積極的に行なう。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授