4つのフェーズの概要は次のとおりです。
(I)構想フェーズ(戦略を実現するための戦術を作成します)
事業目標や事業戦略を分析して、戦術レベル(レベル2)の業務改革モデルへと、より詳細に展開します。
上図の左端の数字(0、1、2、3、4、5、6、7)が プロセス階層レベルで、そのすぐ右にその階層レベルに対応する戦略、戦略課題などが記載されています。
など、
次いで4つのモデル(ビジネスモデル、ビジネスプロセスモデル、IT要求モデル、ITモデル)があります。このフェーズには2つのビジネスモデル(「顧客価値提供モデル(対外部)」と「業務改革モデル(対内部)」)があり、前者を後者に変換します(詳細は略)。その結果のレベル2プロセスです。
レベル2のどのプロセスに問題があり、改革するべきかが明確になります。すなわちレベル2プロセスでの業務改革案(つまり戦術)となります。上図ではレベルのプロセス「新製品設計」と「新商品統合」を改革しなくてはいけないことが分かります。それを次のフェースでレベル3プロセスに分解し分析・設計していきます。
(II)企画フェーズ(プロセス上位設計)
ビジネスプロセスモデルには、「プロセス改革モデル」とハイレベル、ミドルレベル、ローレベルの3つの「ビジネスプロセスモデル」があります。上記業務改革モデル(レベル2)を実現するために、戦術のプロセス改革モデルを分解してハイレベル(レベル3プロセス改革レベル)のビジネスプロセス上位を設計します。それがプロセス改革案になります。
このフェーズの詳細は次の5つのステップで行います。
(1)改革するべきレベル2プロセスに該当する現状のレベル3プロセスを記述します(ここに問題があるはずです)。実作業担当者はレベル5の仕事をしていますので、雲の上のようなレベル3の仕事を正確に把握できないのであまり役に立ちません。本来課長クラスが明確に認識していなければいけないのですが、日本企業の場合、誰がそのプロセスのオーナーなのか不明なことがしばしばあります。ここで抜けているプロセスが発見されることすらあります。
(2)レベル2プロセスを構造化します。レベル2のプロセス階層で新しく設計された内容をレベル3のプロセスに機能分解します。ここで業務参照モデル(ベストプラクティス)を利用します。現状のレベル3プロセスと比較しその差を明確にするのです。
(3)現状プロセスの課題(現場の課題)を抽出します。現場で抱えている課題があればそれも同時に解決するために、レベル3に位置する課題を抽出します。これも課長クラスの認識次第です。
(4)プロセス分析を行います。レベル2からの機能分解したレベル3参照モデルを実現するためのCSF、現状のレベル3プロセスの課題の根本原因などを特定します(極めて重要)。
(5)レベル3プロセスを設計します。上記プロセス分析をもとに、その解決策としてのレベル3プロセスを設計します。それには関係者の合意形成が重要です。
このようにしてレベル3プロセスの分析と設計を行います。いきなり解決策(レベル3プロセス設計)にジャンプするのではなく、しっかりプロセスを分析することが肝要です。それには業務参照モデルが極めて有効です。
業務参照モデルではビジネスプロセスのフロー、インプット/アウトプット、成果物などが明確に定義されていますのでプロセスの分析に大変便利です。そしてビジネスプロセスの問題を特定し、改善策を提案することができます。プロセス参照モデルを使用すれば、ビジネスプロセスの効率性を向上させ、コストを削減し、品質を向上させることができます。
プロセスを機能分解する際に注意することとしてプロセスの粒度をそろえることが重要と言われることがありますね。しかしこれはあまり正しいことではありません。同じ階層レベル(例えばレベル3)のプロセスとは全てのプロセスのアウトプットがその階層のいずれかのプロセスのインプットになって繋がっているということです。それが同じ階層レベルのプロセスで、プロセスの粒度(大きさ:作業工数?)とはあまり関係ありません。ですから粒度をそろえることはあまり意味がありませんし、そもそも粒度という用語の定義はあいまいなものです。
業務参照モデルはベストプラクティス(実績があるもの)なので、プロセスのインプット、アウトプット、成果物は全て定義されていて、同じ階層レベルのプロセスは全てが確実につながり動作します。そして抜け漏れもありません(すなわちMECEなことが実証済みです)。業務経験のないプロセスを抜け漏れなく機能分解することは至難のワザではないでしょうか。ベストプラクティスの参照モデルならそれも安心です。
実際の参照モデルの一部(レベル3プロセス)を紹介します。
「受注・出荷」(レベル1)の下の「汎用品の受注・出荷」(レベル2)の下のレベル3プロセスです。
「引合と見積り」→「注文の受領と受注登録」→「在庫引当と納入日の設定」→「出荷オーダーの集約」→……等があります。全てのプロセスのアウトプットはいずれかのプロセスのインプットとして繋がっています。
続いてレベル2プロセス「特注品受注・出荷」「開発統括」「新商品の設計」の下のレベル3プロセスの関係です。
「特注品受注・出荷」(レベル2)の下の「RFP/RFQの入手と確認」(レベル3)から「新製品統合」(レベル2)の下の「要求の受領と確認」「要求の分解」「要件の配信」(レベル3)につながります。そして「新製品設計」(レベル2)の下の「設計要求の受領、確認、分解」(レベル3)につながります。
このようにレベル2プロセスの機能分解に参照モデルを活用し、レベル3プロセスを設計していることが分かります。
こうして分析・設計された新しいレベル3プロセス図の例です。
続いて、計画フェーズです。
(III)プロセス改革計画フェーズ(プロセス中位設計)
レベル4:プロセス改善レベルのビジネスプロセスモデル(中位)を定義します。これをITによって支援するために、概要レベルのIT要求モデルも定義します。(詳細は省略)
そして最後の実施(導入)フェーズになります。
(IV)プロセス改革実施フェーズ(プロセス下位設計)
レベル5:プロセス実行レベルのビジネスプロセスモデル(下位)を定義していきます。同時に概要レベルIT要求モデルから、詳細レベルのIT要求モデルを定義する。これに基づいてITシステムを開発し、ITモデルを完成させます。(詳細は省略)
上記I〜IVをまとめたものが下図です。
冒頭に述べた、
を上から順番に階層的に、段階的に詳細に作業を進めていく概要を図示しています。
以上、簡単ですがビジネスアナリシス方法論 GUTSY-4の概要でした。
CBAP、(株)KBマネジメント 代表取締役、前IIBA日本支部BABOK担当理事
28年間、YHP/HPにて、営業マネジャー、マーケティングマネジャー、SEマネジャー、SE教育マネジャーを歴任。グローバルシステムの導入でビジネスアナリシスの経験を積む。その後に独立し、KBマネジメント社を設立し現職。現在は、人材教育コンサルタント、研修インストラクターとして、IIBA認定ビジネスアナリシス教育プログラムの開発と提供を手掛ける。
2015年〜2022年(8年間)IIBA日本支部BABOK担当理事
「やさしくわかるBABOK」(秀和システム)(共著)。BABOKRガイドv3(日本語版)監修責任者。キンドル版「よくわかるビジネスアナリシス」(共著)BABOKガイドアジャイル拡張版v2(翻訳・出版)、ビジネスデータアナリティクス・ガイド(翻訳・出版)プロダクトオーナーシップ概論(翻訳・まもなく出版)、資格:CBAP(Certified Business Analysis Professional)(2011年)
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授