BBB時代のDX推進において「アルムナイ」が企業にとって貴重なパートナーになるITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(2/2 ページ)

» 2025年04月02日 07時08分 公開
[山下竜大ITmedia]
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 芦川氏は、「人材確保の難しさを裏づける求人倍率のレポートがありますが、業種別ではIT・通信業界が8.33倍と報告されています。これは相当な売り手市場ですが、その一方で転職希望者数はほとんど変化がありません。また職種別ではIT・通信のエンジニアが14.15倍で、ダントツ1位になっています。こうした厳しい状況下で、いかに人材を確保し、よいチームを作るかが重要になります」と話している。

スキルベース時代のBBBモデルで重要になるアルムナイとの関係

 労働人口の減少が止まらず、人材獲得競争が激化する現在、人材獲得戦略は「メンバーシップ型・ジョブ型からスキルベースへ」と変化してきた。メンバーシップ型は1人の人材に対し1つの仕事、ジョブ型は1つの仕事に1人の人材、スキルベースは1人が持っている複数のスキルを複数の仕事に生かすモデルである。スキルベース型の組織作りでは、スキルを持った人材を「採用(Buy)」し、「育成(Build)」する「BB」だけでなく、スキルを「借りる(Borrow)」ことを加えた「BBB」が重要になる。

 「現在、人材獲得のためのさまざまな求人サービス、マッチングサービスが登場していますが、過小評価されているのがアルムナイです。労働人口全体の5%以上が毎年転職していて、正社員の半数に転職経験があります。しかし多くの企業は退職者とつながっていません。BBB時代においてアルムナイは、企業にとっての貴重なパートナーであり、退職で終わらない企業と個人の新しい関係が生まれています」(鈴木氏)

 アルムナイとの関係を構築することで、「中途・新卒採用担当」として、「人材開発・キャリアデザイン担当」として、「従業員体験向上・退職率改善担当」として、「営業や新規事業担当」としてメリットが期待できる。たとえば、採用(Buy)の視点では、アルムナイの再雇用により、即戦力としてはもちろん、社外の知恵を持ち帰ってくれるメリットもあるし、採用ブランディングにも良い影響がある。また育成(Build)の視点では、講師やメンターになってもらうことで、アルムナイによる社外の視点での育成も可能になる。

 さらに借りる(Borrow)という視点では、社内外の両方を知っているアルムナイと協業することで、「知の探索」と「知の深化」の両方を得ることができ、新規事業開発や社内改革などのイノベーションを促進することができる。

 鈴木氏は、「社内の人材だけではDXを実現できない場合、新たにDX人材を採用しようとしても人材不足のため採用が困難です。そこで社内外から人材を借りてくる方法の1つとしてアルムナイが魅力的で有効になります。退職者が元の会社にカムバックしている事例や、退職者が起業して元の会社と協業しているケースはすでに数多くあります。特にIT系はアルムナイと相性がよい分野だと思っています」と話している。

BBB時代におけるアルムナイは企業の貴重なパートナー(画像提供元:ハッカズーク)

 アルムナイ・リレーションシップの活用によるDX推進について鈴木氏は、「DXは、概念実証(PoC)的に始まることが多く、その中で新しい技術を取り入れる場合、自社では持っていない技術を活用するための人材を社内で育成することが必要です。このときアルムナイと協業して実現した事例は数多くあります。アルムナイ・リレーションシップを活用したDX推進により、ユーザー企業であればDXを効率的に実現することが期待できるし、SIベンダーであれば自社のサービスを強化することが期待できます」と話している。

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