【第2回】チャンスと課題――技術が広告業界に与える影響Web2.0時代に挑む広告代理店

広告業界は、ビジネスと創造性が出会うことによって成り立っている。広告代理店アーノルド、ボストンオフィス社長のハムリン氏は、SNSやブログが急増し競争のあり方は様変わりしたと感じている。

» 2007年12月10日 10時57分 公開
[Michael Ybarra,ITmedia]

 ボストンで地価の高いバックベイ地域にあるビルの8フロアを占めるアーノルド本社のロビーは、ちょっとした広告ミュージアムだ。

 一方の壁側には、使い古しの緑のラウンジチェアが寄せて置かれている。別の壁側には黒い遺体袋が転がっている。ラウンジチェアは、アーノルドが制作したフォルクスワーゲンの印象的なテレビCMで使われた。

 そのCMは2人の男が街角でラウンジチェアを拾い、フォルクスワーゲンに詰め込んであちこちドライブしていたところ、それが臭うのに気付いて、別の場所で放り出すというもの。一方、遺体袋は禁煙キャンペーンのスポットCMで使っている。

 「この業界は、ビジネスと創造性が出会うことによって成り立っているわれわれのビジネスはアイデアが勝負。核となるアイデアを見つけ出し、それを表現できるかどうかが常に問われる」と、アーノルドのボストンオフィスの社長を務めるパム・ハムリン氏。

 1946年にアーノルド・Z・ロゾフ氏が広告代理店をボストンに設立し、自分の名前にちなんで社名をアーノルド&カンパニーとした。ロゾフ氏は1988年に同社を売却。その後、所有者が何度か変わり、1990年に現CEOのエド・エスカンダリアン氏が買収した。同氏はすでに、経営権をフランスの大手広告代理店アヴァスに売却している。

 アーノルドはフォルクスワーゲンの広告キャンペーン「Drivers wanted」(ドライバー求む)などの愉快なCMで名をはせた(2005年にフォルクスワーゲンは突然、10年に及ぶアーノルドとの取引を打ち切り、同社と競合するクリスピンポーター+ボガスキーと契約した)。2004年のスーパーボウルでは、たばこ業界を危険物の販売者として風刺したCMでエミー賞を受賞。このキャンペーンの後、若者の喫煙が22%減少したということがある。

 2005年にアドバタイジングエイジ誌が発表した米国の広告代理店の規模ランキングで、年商1億4400万ドルのアーノルドは19位に入っている。

 しかし、ここ数年、SNSやブログが急増し、広告業界の競争のあり方は急激に様変わりした。それは、課題とともにチャンスを増やしている。

 「技術はマーケティングに極めて強い影響を及ぼしている。わたしがこのビジネスに携わったころは、ブランドのメッセージを伝える方法は6〜7種類しかなかった。今では膨大な数のやり方がある。その上、ITを駆使してマーケティングの結果を分析するようになっている。クライアントはROIマーケティングを本格的に模索している」(ハムリン氏)。

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