こうした状況を改善するための指針として脇坂氏が示したのが、チップメーカーである米NVIDIA社の生産管理システムである。実は同社はファブレスメーカーとして、全ての生産・在庫管理業務を外部にアウトソースしているのだが、メーカーとしてそれらの工程管理を行うことは不可欠との考えから、SAPのERPシステムを利用しXMLを用いて情報をリアルタイムに一元管理できる環境を整えている。
「水平統合型のビジネスモデルを採用しているにもかかわらず、NVIDIAはアウトソース先からリアルタイムに情報を収集できる仕組みを整えている。日本企業もシステムを見直し、同様の環境を整備することで競争力をさらに高められるはず」(脇坂氏)
シャープは最先端の液晶パネル工場と、薄膜太陽電池を量産する太陽電池工場を併設する「21世紀型コンビナート」の建設を2007年7月に表明。敷地内には関連部材・装置メーカーの工場が誘致される。この狙いは部品技術の囲い込みと、他社とのより密な情報共有にあると考えられるが、シャープでは情報共有の高度化を目的に、SAPシステムを用いた「経営コックピット」を導入した。すでに役員の各個室に配置された大型ディスプレイには世界各国から寄せられる様々な情報がリアルタイムに表示され、意思決定に役立てられているという。
「日本はシステムが個別に開発されているケースが多い。そのため、各システムの情報をまとめて見たいと考えても、技術的な問題から容易には実現することができない。だが、競争がさらに激しさを増しつつある中で、情報の可視化を図るための何らかのチャレンジが企業には求められている」(脇坂氏)
脇坂氏によると、競争力の維持や強化に向けて企業の現場では、業務プロセスに頻繁に手が入れられているという。そうした状況に耐え得るシステムの整備、ひいては情報の可視化ができるか否かが、企業の今後の明暗を大きく分けることになりそうだ。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授