血管にも年齢があるという。血管の老化が進むと動脈硬化を招き、脳卒中、心臓病を引き起こす原因となる。血管年齢を若く保つ秘けつとは。
日本人の三大死因はがん、脳卒中、心臓病です。このうちがんを除けば動脈硬化、すなわち「血管の老化」が原因です。血管を若く健康に保つことは健康長寿を達成するために極めて重要です。老化といっても老化の仕方は人それぞれ。中には30代から血管に老化の兆しが表れる人がいます。
実はエグゼクティブの方々には老化の弱点が血管に現れる例が少なくありません。せっかくばりばり働こうと思っても、脳や心臓に十分な血液が供給されなくては、身体は動きません。動脈硬化は初期には症状が現れにくいので、対抗策を練るにしても、まずは動脈硬化の程度を知ること、血管年齢を知ることが大切です。
アンチエイジングドックでは、血管年齢を動脈硬化測定装置によって評価します。いくつか方法がありますが、加速度脈波計による測定は、操作は簡単、装置も安価で安全、持ち運び自由なので、是非とも企業検診に取り入れて欲しいアイテムです(図1)。座った状態で、息を整え、左手の人差し指を装置に挿入するだけで、20秒程度で検査は終了。推定血管年齢が表示されます。
30歳の時点でもはや血管年齢が50歳以上になっている人がいます。これは血管年齢の病的老化と言えます。早急に対策を練らないと、若年齢のうちに脳卒中や狭心症・心筋梗塞になってしまう恐れが生じます。
動脈硬化の危険因子、動脈硬化を進めてしまう原因は良く分かっています(表1)。代表的なものはタバコ、高血圧、糖尿病、高脂血症です。それ以外にも悪玉のアミノ酸(ホモシステイン)、炎症反応(CRP)、ストレスおよびストレスホルモン(コルチゾル)、肥満(内臓脂肪の貯留、メタボリックシンドローム)、インスリン過剰、酸化ストレス(フリーラジカル、活性酸素)、糖化ストレスなどがあり、いずれも多すぎると困るものばかりです。わたしたちの調査では、エグゼクティブの方々は強いストレスにさらされていることが分かっています。アンチエイジングドックではこれらの危険因子について検査します。
危険因子がいくつか重なると、動脈硬化の危険度は相乗的に悪化します。つまり1+1が2になるだけでなく、3にも5にもなるのです。これらの危険因子のうち糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満のすべて加わった状態はシンドロームXと呼ばれ、動脈硬化の進展が急速で若年で脳卒中・心筋梗塞を発症することが分かっています。
労働衛生の領域では要チェック項目になっていて、検診でこのような事例が見つかると特別指導がなされるよう法律で定められています。
血管年齢を若く保つ方法は、これらの危険因子を一つ一つ排除することです。特にタバコ、高血圧、糖尿病、高脂血症の血管への影響は深刻なので、すぐにタバコをやめて疾患治療を始めるべきです。生活療法が中心で、食事療法と運動療法により適正体重を保つことがポイントです。脂肪の取り過ぎやカロリーオーバーに注意して、運動療法を継続してください。運動は有酸素運動(週4回)、筋肉負荷トレーニング(週3回)、ストレッチ(毎日)のバランスが重要です。フリーラジカルからの防御としては禁煙、ストレス対策、抗酸化物質の摂取(食事かサプリメント)などです。エグゼクティブにはタバコは似合いません!
血管年齢の改善方法にもいろいろあり、自分が何をすべきなのか分かりにくいことが問題です。アンチエイジング企業検診を実施すれば、この点はすっきり解決します。どの要因が一番強いのかを見極めてから、個人個人に見合った療法に優先順位を定めて、それを効率よく長く続けることが大切です。
米井嘉一(よねい よしかず)
同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター教授
1958年東京生まれ。1986年に慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程を修了後、UCLAに留学。1989年に帰国後、日本鋼管病院内科 人間ドック脳ドック室部長を経て、2005年に同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授就任。現在は同志社大学生命医科学部の教授を兼任し研究に尽力するほか、日本抗加齢医学会の国際担当理事として、アジア、ヨーロッパ、アメリカなど各国の抗加齢医学会との交流に努める。主な著書に「抗加齢医学入門」(慶應義塾大学出版会)、「アンチエイジングのすすめ」(新潮社)など。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授