労働集約にせよ設備投資にせよ、単に同じような特徴を持つ企業群が、統制力がないグループという傘の下に集まっても、売り上げや利益を押し上げることはできません。逆に、いったん市場環境が悪化した場合には、経営陣は業績が悪いグループ企業の手当てに負われ、ますます成長戦略を描くことが難しくなってしまいます。
ホールディングス制という形態も、事業そのものの迅速な意思決定や、強固なガバナンスには不向きであるという面があることは否定できません。ホールディングス制を採用する場合でも、グループ会社のガバナンスに専念する純粋持ち株会社制ではなく、本業を行いながら子会社を統括する事業持ち株会社制の方が効果的な場合が多いのではないかと考えられます。
ただ、大事なことはホールディングス制の在り方を議論することではなく、買収後の事業や資源のポートフォリオを描き、買収したベンダーの内部にも深く踏み込み、グループ間連携や統合を実現し、1つの企業、有機体として存在していくことです。
これを成功させるためには、買収前のデューディリジェンス(事業精査)を適切に実施することが不可欠です。対象ベンダーの強みや自社との相性・シナジーの正確な理解がなければ、買収後の成長戦略を描くことは不可能です。
また買収後にはPMI(Post Merger Integration)と言われる「事業・組織の統合化」の巧拙が、成長戦略実現の成否を分ける決定的な要因になります。
次回以降は、これらの「システムベンダーへのデュー・ディリジェンス」と「PMI」について考えてみることにします。
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慶応義塾大学理工学研究科修了後、三菱マテリアル、ネットワンシステムズを経て現職。米国コロンビア大学MBA。情報通信業、電機、自動車、金融、航空業界など幅広い業界における、事業戦略、新規事業立案、組織・人材戦略、マーケティング戦略、IT戦略の立案とともに、大規模PMOの運営などの実行支援も手がけている。システムアナリスト、システム監査技術者の資格を保有という一面を有する。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授