あなたは、ニーチェに対して、「暗くて」「難解な」イメージを持ってはいないか。
19世紀後半の欧州を生きたドイツの哲学者、フリードリヒ・ニーチェ。ニーチェについては、これまでに多くの書籍や資料などで紹介されてきているが、その人となりに関しては「暗い」「重い」「難解」といったイメージが付きまとう。なぜか?
その1つの原因として、あの悪名高いアドルフ・ヒトラー率いるナチスの思想の土台となったニヒリズムとの結び付きによるところが大きいのではないだろうか。著者によると、そもそもニーチェはニヒリズムの哲学者ではなく、むしろニヒリズムを批判していた。ナチスがニーチェの文章の断片を自分たちの都合が良いように歪曲したのに過ぎないという。
また、後世の学者たちがニーチェの思想の暗い面をあまりにも強調し過ぎた点も、上述したニーチェの印象につながっているとしている。
本書は、そうした従来の負のイメージから開放し、新たな(あるいは、本来の)ニーチェの姿を示す1冊といえよう。ニーチェの半生を紹介するとともに、代表的な作品やフレーズ(「神は死んだ」など)に対して、初級者でも分かりやすく、できるだけ平易な表現で解説している。
本書はそのタイトル通り、ニーチェを知る上での入門的な手引きにはなり得るが、ニーチェを深く理解するためには、ほかの解説書や評論も目を通す必要があると著者は語る。著者の言葉を借りれば、本書は「お新香」に過ぎず、ニーチェ食堂には「肉」や「煮込み」もあるのだという。
著者はこうも言う。「けれども、お新香には体に良い乳酸菌が含まれている」――。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授