35歳からの「脱・頑張り」仕事術ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

» 2011年06月23日 07時00分 公開
[山本真司,ITmedia]
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最強の兵士、最悪の指揮官

 当初のわたしのマネジメントは、とにかく、ほっぽり出すことだった。分担を決めて、任せる。そして、最後に、プロジェクトの不具合を発見しまくって、毎晩徹夜をしてつじつまを合わせるという「ウルトラ放し飼い」マネジメントであった。

 これでは、マズイということで、今度は真逆の方法をとった。「究極の一人プロジェクト」よろしく、全てを自分で設計し、細部にわたり指示を行った。自分が疲れ部下は成長せず、仕事の成果もギリギリの合格点は取れるものの、成長は感じなかった。

 そこで、(1)アウトプットの成果を最大化し、(2)部下が、自分の仕事に完全なオーナーシップと当事者意識を持ち、かつ、(3)わたしと働いて、部下が成長の実感を味わえるような、プロジェクト運営の方法論を構築するに至った。これは、40にもわたる小さな技を体系化させた、「仕組み」として出来上がった。

 詳しくは、本書に譲るが、マネージャーとしてプロジェクトの最初の短期間は、「一兵卒」として落とし所と仮説の構築に走りまわる。しかし、部下との会議では、自分の仮説を絶対に押し付けない。あたかも、仮説なんて無いような振りをしながら部下の声に耳を傾ける。そして部下の発見、思考回路をジャックしながら、チームとしての仮説をまとめるようになっていった。

 2週間に1度しか行わなかった部下とのミーティングも週に複数回、極めて短時間だが行うようにした。また、決して、人前で部下を叱りつけることをせず、一切の失敗の責任は、マネージャーである自分がとることを身を持って示した。こうして、部下が安全という衛生要因が満たされると、初めて自分ごととして仕事のリスクに立ち向かう姿を見せるようになった。しかし、権限委譲は、仕事品質の劣化を招くことも多い。

 わたしは常に机の下で仮説を考え続けるという安全装置を稼働させていた。こうすることで、いざという時は、仕事を引き受けられるという状態を担保しながら、目いっぱい、権限委譲する仕事スタイルが完成した。(本書では、これらの個別技を「始めは一兵卒のごとく」、「分らんふりミーティング術」、「ブレイン・ジャック創造思考」、「ムカデ、芋虫型ミーティング術」などとして詳細に紹介している)

 この「仕組み」が完成したのは40代。それ以降、苦手科目であったはずのチーム・マネジメントが好きになった。その後、組織のリーダーを務められたのも、こうした苦闘の過程から学んだ「仕組み」のおかげだったと思う。

 本書には、わたしの体験からあみ出したオリジナルの「仕組み」体系と、40の技を、素直に正直に書いてみた。苦闘の歴史を思い出しながら、自分の恥部を世間にさらすような恥ずかしさに耐えつつ、本音で語りつくしたつもりである。是非、この体験を刺激剤にして、マネージャーとして苦闘するかたがたに、行動のヒントをつかみとって欲しい。

 たとえ、どんなに苦しくても、どんなに自分に才能がなくても、努力で「未来は創れる」んだということを伝えることができれば、著者として最高の喜びである。優秀なプレーヤーから、マネジメントへの飛躍を志す全てのミドルマネジャーに読んで欲しいと切望している。

著者プロフィール:山本真司

ビジネスアナリスト

立命館大学経営大学院客員教授、経営コンサルタント。慶応義塾大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院卒業(MBA with honors)。ボストン・コンサルティング・グループ、A.T.カーニー極東アジア共同代表、ベイン・アンド・カンパニー東京事務所代表パートナーなどを経て、2009年独立。株式会社山本真司事務所代表取締役。20年の経営戦略コンサルティング経験。他に、「30歳からの成長戦略」(PHP研究所)、「40歳からの仕事術」(新潮新書)、「20代仕事筋の鍛え方」(ダイヤモンド社)などの著書多数。


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