できる人には秘訣があるビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

» 2011年09月01日 07時00分 公開
[福井克明,ITmedia]
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真の人材育成とは

 誤解を解くために丁寧かつ平易な論理展開で、評価の仕組みと成果のスパイラルアップ構造について説きました。時間の作り方も、決して大きな負荷とならない範囲で示してあります。そして一番大事な考え方や取り組み方についても、概念と要点のみを伝えるにとどまらず、ルーティン改革に不可欠な9つの視点を「思考のテンプレート」というツール(出版社の特設サイトからダウンロード可能)をつけ、誰でもが一定以上の思考を得られるように配慮してあります。

 企業は人、とは昔からよく言われる言葉ではありますが、一方で、社の仕組みに加えて自分なりのメソッドで体系的に真の人材育成をできるエグゼクティブが少ないように思います。個別のミッションについて、どのように思考したら良いのか、どのようなソリューションが正しいのかを導いてやれる上司は存在しますが、部下にとって生涯のビジネスの糧となるような思考法をもって、仕事の本質を体系的に示せる、時折機会があればではなく、常にそれを軸にして語るエグゼクティブが日本には少ないと感じるのはわたしだけでしょうか。

 マネジメント層に求められるのは、偶然に存在したダイヤの原石のような社員を見つけることではなく、部下全員の(できるだけ多くの部下の)育成を行うことです。真の人材育成とは、各人の持つ能力を存分に発揮できる環境を整えてあげることであり、その入り口に立つ方法を明確に示すことだと考えています。それを体系的に考察する上で、(わたしの持論や拙著だけが正解とは当然思っておりませんが)一助にはなるような斬新な視点でつづりました。ぜひ参考にして下さい。

 また、エグゼクティブの方々であれば、もうお分かりかと思いますが、スパイラルアップするのは、なにも個人の評価ばかりではありません。企業の評価も、同様にスパイラルアップするものです。差別化のしようのない領域やミッションにこそ、差別化のチャンスがあり、それを続けることで独創性を求められる、利益率の高い、社会貢献度の高い仕事が舞い込んでくる。それで実績を出すと、次々とそのような依頼がくる。(拙著の主語を「自社」に置き換えて読めば、きっと経営者のかたがたの参考にもなるはずです。)

 自社のエース級を投入している重要な仕事も当然大事ですが、実は自社の評価を底上げし、より多くの重要な受注につなげていくのは案外と、ルーティンワークに見えるような仕事の仕上げ方です。それらを担う、まだスパイラルアップしていない社員層の仕事の仕方を革新することこそが、企業全体をスパイラルアップさせる要諦であり、世の中に必要とされ続け、発展し続ける一番の礎だと思っています。

 より多くの日本企業が、人材育成というキーワードで世界のリーダーたり続けることを願ってやみません。

著者プロフィール:福井克明

ラッキーリバー・パートナーズ株式会社代表取締役。経営コンサルタント。

大学入試に失敗し、そのまま営業会社へ就職。圧倒的な営業成績により19歳で支店長となったのを皮切りに、のちの大学時代には物流センターのマネージャー職や学習塾チェーンの社長業を経験する。卒業後、人材派遣会社を起業。しかし、自分は起業家よりもサラリーマンとしての存在価値を出す方が向いていると痛感し、徹底してサラリーマンの道を歩むことを決意する。東証一部上場企業の子会社CFO、上場大手外食企業の経営戦略担当の常務取締役などを経て、2007年からは経営コンサルタントとし、多くのベンチャー企業経営者を強力にサポートしている。これまでに7つの企業で働いた経験をもとに、各人が最大の評価を得るための仕事術を体系的に構築。主宰するビジネス講座「スパイラルアップ仕事術」でそれを教え、多くの受講生が成果を出している。


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