ビジネスパーソンにとって滑舌は大事か?リーダーは低い声で話せ(2/2 ページ)

» 2014年02月10日 08時00分 公開
[永井千佳,ITmedia]
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<横隔膜トレーニング集>

 これまでご紹介してきたトレーニングのまとめです。どれも簡単で効果があります。日々のトレーニングに役立ててください。

「横隔膜のスイッチ」

 どんな人でも声は必ず良くなります。人はだれでも声を出すためのスイッチを持っているからです。それが"横隔膜のスイッチ"です。

■横隔膜のスイッチをオンにする方法

【手順1】足を肩幅に広げ、リラックスして立ちます。(壁に背中をピッタリつけると姿勢が安定します。)

【手順2】普通の声の大きさで「あーーー」と声をのばしてください。

【手順3】そのまま「あー」と言いながら、肋骨のすぐ下あたり(横隔膜)を、両手のグーで強めにグイッと押しましょう。(押したとき声を止めないでください)


 押したとき、自然に声の大きさが変化すれば、"横隔膜のスイッチ"がオンになっています。

「ボイストレーニングの呼吸法」

 横隔膜をしっかりと使って呼吸できているかどうか、確認のために行う簡単な呼吸のトレーニング。

【手順1】アゴを下げて口を大きく開けて「ハアッ!」と大きく思い切り限界まで息をすう。

【手順2】口を開けた状態で10秒間、我慢して息を止める。

【手順3】「ハアーッ!」と一瞬ですべての息をはききる。

  • ヒント1:できるだけお腹を張り出したまま息をはくこと。
  • ヒント2:手順3で息をはくとき、のどで「kッ……」とか、「あ"っ……」という雑音がしないように。

「呼吸と声で横隔膜を鍛える“横隔膜ボイス”」

■「横隔膜ボイス」のやり方

【手順1】両足を肩幅に開き、肋骨を持ち上げるようにして立ちます。両手を開いて肋骨の下のお腹に当てます。

【手順2】顎を下げて口を開け、リラックスして、ゆっくり大きく息を吸います。肋骨下のお腹がパンと張り返しているのを確かめてください。

【手順3】口を閉じ、唇のわずかな隙間から力強く息を吐きながら、「ふぅ〜〜〜」と小さく声を出します。「声:息=2:8」のバランスで息がメインです。頬と鼻の下が息でパンパンにふくらむように。息を吐いていくと、お腹は少し凹んでいきますが、それに抵抗するように、がんばってお腹を張り返してください。

【手順4】5秒間発声したら、ふたたび口を開けて手順2に戻ります。

【回数】手順1〜4を5回繰り返します。


「ここ一番の交渉・コミュニケーションに強くなる“低音トレ”」

■「低音トレ」のやり方

 最初ははっきり声を出して自分の声の低さの位置を確認します。慣れてきたら、ボリュームを絞って小声でやってもOKです。

【手順1】足を肩幅に広げまっすぐ立ちます。左手を肋骨の下のお腹に当てます。右手は伸ばして手のひらを上に向け、頭の上にかかげます。

【手順2】顎を下げて口を開け、ゆっくり大きく息を吸います。舌先が下の歯にさわるくらいの位置です。

【手順3】「はあ!」と高い声を響かせてから音を切らずにそのまま「はあ〜〜〜ぁ」と音程を下げていきます。同時に、右手は声の高さにあわせて弧を描くように下げていきます。左手もお腹の張り返しを強く意識してください。

【手順4】低い声に達したら音程はそのままで「あ〜」とのばします。右手も低い位置のままです。

【手順5】息が切れたら、ふたたび口を開けて手順2に戻ります。これを5回繰り返します。


 これらの横隔膜トレーニングを、一日5分、週3回くらいなら1カ月、毎日なら10日ほど実践してみてください。トレーニング後は短い文章でよいので、話している様子をスマートフォンやボイスレコーダーで、トレーニング前と後を録音して比較してみてください。その違いを実感できるはずです。

 私は、もともと声がか細くて甲高いほうです。人前で横隔膜のスイッチを入れて声を低くして話すようになったら、聴衆の反応が違いました。低い声で話すと、今まで声もかけてもらえなかったのに「あなたのスピーチは良かった」とか、何人もから声をかけてもらえるようになりました。低い声のほうが心に刺さる度合いがはるかに大きいのです。

 同じことを話していても、良い声の人の話に自然と耳を傾けます。「この人は信頼できそうだ」と認識して、初めて中身に関心がいくのです。甲高い声やモゴモゴとした声から、よく通り明瞭な低い声に変えれば、ビジネスで相手に与える印象が変わってきます。

 「一人前のビジネスパートナーとして認められたい」そう思うならば、しっかりした発声を身につけるべきなのです。「この人に任せたい」と思ってもらえるかどうか。仕事で信頼感を高めたかったら、声を低くすることです。音域を下げれば、人物の評価は上がる。決して逆ではありません。ボイストレーニングを始めて声が良くなってくると、トレーニング前と同じことを話しているのに、なぜか皆さん聞いてくれます。

 ボイストレーニング、それは変身です。最初は照れくさいかもしれません。でも、ちょっと勇気を出して、ビジネスの現場でその変化をぜひ確かめて下さい。少しでも多くの方がよい声を手に入れて変身するお手伝いができれば、たいへんうれしく思います。

著者プロフィール:永井千佳(ながい ちか)

ボイストレーナー、音楽指導者、 ピアニスト。

桐朋学園大学音楽学部演奏学科ピアノ専攻卒業。国内外での演奏会開催多数。2005年 混声合唱団設立、代表に就任。合唱指導・ボイストレーニング指導の経験を基に、「ビジネスリーダーのためのボイストレーニング」「合唱チームビルディング」などの企業向け研修を提供。また企業経営者向けに「エグゼクティブ・ボイス・トレーニング」を提供、多くの社長たちの声を変え続けている。その活動は、NHK総合「サキどり↑」(2013/6/2)、週刊誌AERA(2013/11/25)、文化放送「オトナカレッジ」出演(2014/1/8)など、メディアでも話題になっている。

また、2013/2/26のITメディアエグゼクティブ勉強会では、60名以上の企業に勤めるマネージャーが参加した。音楽をテーマに毎日投稿を続けている「永井千佳の音楽ブログ」では、230名以上のブロガーを抱えるITメディア・オルタナティブブログでアクセスランキング月間1位を継続中。特にボイストレーニング関連のアクセスが多く、はてなブックマーク2000 超えを達成したエントリーもある。

主な著書に、「DVD付 リーダーは低い声で話せ」(KADOKAWA 中経出版)がある。


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