「研修でイノベーション? あり得ない」「社長、それができるんです!」ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

» 2017年10月12日 07時12分 公開
[井上功ITmedia]
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「イノベーション研修」はあり得ない?

 私は仕事柄、1年に200〜300人程度の企業の人事部、経営企画部、研究開発セクションの責任者と議論します。そこで、この“研修でイノベーションを起こす”というアイデアを何人かのエグゼクティブに話を持ちかけてみました。約6年前のことです。

 彼らから返ってきた反応は、おおむね次のようなものでした。

 「井上さん、イノベーションは研修で起こせるわけがない。研修で起こせたら苦労はしない」

 「研修のようなやり方でイノベーションが起こせるのだったら、多くの会社がやっている。そんな甘いものじゃないよ、イノベーションは」

「イノベーションは徹底した技術の深堀りで初めて可能になるものだ。研修のような真剣さが足りない時間で、技術を深耕することなどできない」

 まとめるなら、「イノベーション研修なんてあり得ない」というのが、現場のリアルな反応でした。「非日常」であり「緩く」て「生ぬるい」研修から、「困難」なイノベーションが生み出されるということが、彼らにとっては到底考えられないことだったのです。

実際に「イノベーション研修」をやってみたら……

 「案ずるより産むがやすし。あり得ないところにイノベーションは起こせる」こう考えた私は、イノベーション創出プロセスを参照しながら、「イノベーション研修」のプロトタイプを顧客と共創していきました。

 そして、2017年9月現在、700件を超えるアクションラーニング型のイノベーション提案を生み出しました。全5日間の研修と、その間に行なわれるフィールドワークを経て、最終日に経営者に提案された事業案が次のステップに進んだ割合は約27%。その後それぞれが磨かれて、実際に約20件の新商品やサービスが生まれています。研修でイノベーションを起こすことが、現実のものとなりつつあるのです。

 この「イノベーション研修」の特徴を簡単にまとめました。

  • 5日間の研修と、その間で実施する4回のフィールドワークで構成される
  • 各フィールドワークは1カ月程度の時間を設ける
  • 冒頭で、実際にイノベーションを起こしたイノベーターから話を聞き、刺激を受ける
  • 受講生はフィールドワークで「不」(不便、不満、不安など)を探索、深耕し、イノベーションの起点とする
  • 探索した「不」を踏まえ、「事業案フレーム」を作り込む
  • セッションは座学型ではなく、プロジェクト推進形式で実施
  • 提案された事業案は、できるだけその場で推進可否を決定する

 イノベーションとは、経済成果をもたらす革新であり、新しい価値の創造です。企業が成長するために新しい価値の創造をしなければいけないということを、否定する人は誰もいません。企業は新しい事業を起こさなければならず、常に新しい価値を創造しなければなりません。既存事業はいずれ縮小します。未来永劫(えいごう)、成長と拡大を続ける事業は、この世にはただの1つも存在しないのです。

 もし、新しい価値の創造が、日本の会社で働く人全員のミッションであったなら、いったい何が起きるでしょうか? 考えただけでワクワクします。いわば、イノベーションの民主化です。

 もちろん、社員全員が100%イノベーションを仕事にすることは事実上不可能です。しかし、誰かが「不」や社会課題の解決策を考え、新しいことを生み出さなければ、その会社に未来はありません。リーダーこそが、自社のイノベーションを生み出すのです。

 この本には、研修でイノベーションを起こす方法が事細かに書かれています。リーダーの皆さんの役に立てること、企業からイノベーションが次々と起こることを願ってやみません。

著者プロフィール:井上 功(いのうえ こう)

履歴:1986年4月、?リクルート入社。人事部、広報企画部、総合企画部、HCソリューショングループ等を経て、2012年4月より現職。入社以来、新卒/中途採用、人材開発、組織開発領域において、ソリューション実績多数。

プロジェクト実績:主なプロジェクトに、旧労働省(現厚生労働省)主管「雇用近代化モデル事業」での総合プロデュース、戦略コンサルの   中途採用支援、大手SI企業の人員計画立案、大手IT企業の分社/独立に伴う全社員意識改革などがある。2002〜2012年のHCソリューショングループ在籍時には、グローバル理念浸透、戦略共有、ダイバーシティマネジメント、などの領域でコンサルティングを実施。現職では、イノベーション創出支援が主なテーマ。経済産業省のフロンティア人材調査事業を皮切りに数多くのイノベーションプロジェクトを実施。リコーや大手自動車メーカー、金融機関、広告会社、エネルギー関連などでの実績が多い。

表彰/講演実績:1997年、98年と連続でリクルート全社マネージャMVP受賞。リクルートHR事業部でのナレッジ共有の論文受賞実績多数。広島大学で「イノベーション講座」、国際基督教大学にて「ナレッジマネジメント講座」の講師を務めた他、経済産業省、国土交通省、警察大学校、日本経済新聞社、金融機関、通信会社、総合商社などでイノベーション関連の講演を実施。

著書・卒業大学:『借金1兆円を10年で返したリクルートの現場力』(2005)、 『なぜエリート社員がリーダーになるとイノベーションは失敗するのか』(2015)共に(ダイヤモンド社)。 『リクルート流イノベーション研修全技法』(2017 ディスカバー21社)早稲田大学 第一文学部卒。


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