翌日、白洲に連れ出された桂屋の子どもたち。奉行のきびしい尋問にも負けず、14歳のいちは凛として父の助命を願いでた。そして最後に、いちは西町奉行にある一言を発する。その一言が、その場にいた役人一同の胸に強く突き刺さるのだった……。
寺田氏は、14歳のいちや12歳のまつ、大人の男性である西町奉行や門番ら、さまざまな年代の男女が登場する短編を、落ち着いたトーンで朗読。
江戸時代の奉行所のお白洲、そこにひざまづく子どもたちと、彼らを書院から見下ろす奉行。その光景が目に浮かぶような朗読に、オンラインで視聴している参加者も聞き入っていた。
朗読後に行われた質問コーナーでは、人を引き込む寺田氏の朗読について、大学で教員をしているという参加者から質問が寄せられた。
質問内容は、「ナレーションの時には外から俯瞰して客観的に読み、せりふの部分では登場人物に入り込んで演じるのでしょうか。教壇で講義をする際などに、学生にどのように伝えれば良いのか悩むことがあり、どのように朗読されているのか教えてください」というもの。
寺田氏は、「朗読の際には客観性と、自分なりのイメージを持ちながら、それぞれの役の切り替えながら演じていくという感じですね。キャラクターごとに声音、音色を変えるようなことはせず、最初にキーを決めて、そのトーンを保ちながら読むのが、聞きやすい朗読のポイントです。また、講義などで人にものを伝える際には、その場の全員に伝えようとするのではなく、ある一人をターゲットとするのがいいですね。相手が理解するまでの間をとって、相手のリアクションを感じ取れたら、次の説明にうつる。そうすることで、人に伝わりやすい講義になりますよ」と回答した。
2008年に東海大学文学部特任教授に就任し、約5年間、映画史入門、演劇入門などの科目を担当した寺田氏。自身の体験からのアドバイスは、プレゼンや講演などをする際に、全ての人に通じるもの。画面越しに多くの参加者がうなずいていた。
現在、主演映画『信虎』が全国のTOHOシネマズ系列にて公開中の寺田氏。最後に「次にこの本を読んでほしい、この作家を紹介してほしい、など聞きたい話があれば、ぜひ教えてください」と述べて「朗読の旅」を終了した。
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