40代 「進化するチーム」のリーダーは部下をどう成長させているかビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

» 2022年03月17日 07時07分 公開
[中谷彰宏ITmedia]
前のページへ 1|2       

 例えば、英語の勉強は、英語研究者以外にとっては手段です。いつの間にか英語の勉強を目的化してしまうと、40代、50代になって「やっぱり英語を勉強しないといけないと思うんですよ」と言ったりします。そういう人に、「英語で何をするんですか」と聞くと、「特に目的はないけど、勉強しておかないといけないと思う」と答えます。

 これは「手段が目的化している人」です。

 実際、いきなり海外に転勤して英語を使わざるをえなくなったり、部下に外国人が来たりした人は、カタカナ英語でもとにかく覚えます。英語は、目的ではなく手段と割り切る方法で上達することができるのです。

チームがメリットでのつながりから、リスペクトでのつながりに。

 新しい時代に強いチームは、つながりの基準がメリットではなくリスペクトです。この時、「うちの部下はリスペクトしていないんですよ」と、古いリーダーに勘違いが起こります。

 この発言は、上司が部下を見下しています。上司から部下に対するリスペクトがありません。本来、リスペクトでつながるのは両者(トゥーウェイ)です。部下が上司をリスペクトするのと同じように、上司が部下をリスペクトする関係が必要です。

 これは上司と部下だけではありません。

 例えば、お客さまとお店もリスペクトの関係が求められます。お店が値段を安くしていくと、お客さまは「あの店は安いから行く」となります。そうすると、お店側はお客さまをリスペクトできません。「安いから来るお客さま」と、少し侮った感じになります。

 一方で、味にこだわり、手間をかけすぎて赤字になっているお店もあります。京都にあるパティスリーのお店は、イートインコーナーで試食ができます。つくったお菓子の半分を試食してもらいながら、感想を聞く。喜んでもらうことで、新しいアイデアを研究する材料にしています。

 このお店は、もうけを完全に度外視しています。ここでお客さまはお店に対してリスペクトを感じます。お店側も「全国からうちのお菓子を食べに来ていただいている」と、お客さまにリスペクトがあります。

 安い方がいいという時代は、お客さまとお店は両者でリスペクトがなくなり、働くスタッフもリスペクトがなくなります。

 もう1つ、便利さも同じです。

 あのお店は便利だよね」というのは、リスペクトがなくなります。ITが出てきてから、どんどん便利になっています。

 便利さの幸福感は一瞬で終わります。

 以前は、本を頼んで翌日届くことにビックリしていました。ところが、当日に届くサービスが出た瞬間に、「エッ、明日? 今日届かないの?」という不満になります。便利さは、どこかで反転して、ありがたみをなくしていくのです。

 これからチームを強くするコツは、リーダーが部下に対してリスペクトすることです。リーダーが部下のことを「若いのに頑張っている」「この難しい状況でよく頑張ってくれている」と思えるかどうかが強いチームかどうかの分かれ目です。

 サッカーの試合で負けても、監督はコメントを求められます。例えば、「あいつがあそこでミスしていなければ」と言うと、その監督は選手からの信頼がなくなります。その後、選手は完全に萎縮して、チャレンジをせず、ミスしないように動こうとします。

 たとえ選手がエラーをしても、「同点でいい戦いではなく、より強い相手に勝つためにあそこは攻めなければいけなかった。あの難しい中でよくチャレンジしてくれた」と、チャレンジ精神を評価すればいいのです。

 会社でも、そういうリーダーは部下から信頼されます。上司と部下のリスペクト関係では、部下が信頼してくれたら、上司も部下を信頼するという順番ではありません。まず先に、上司から部下をリスペクトすることが大切なのです。

著者プロフィール:中谷彰宏・作家

1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。博報堂勤務を経て、独立。91年、株式会社中谷彰宏事務所を設立。

【中谷塾】を主宰。セミナー、ワークショップ、オンライン講座を行う。【中谷塾】の講師は、中谷彰宏本人。参加者に直接、語りかけ質問し、気付きを促す、全員参加の体験型講義。

著作は40代「進化するチーム」のリーダーは部下をどう成長させているか(彩流社)など、1090冊を超す。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆