こうした資質を持つ人は、実は、若手〜ミドルのときに見逃されやすいのです。なぜなら、上司となる課長や部長よりも、ある面大局的に物事が見えていたり、気が付かない側面に気が付いたりするからです。そうすると、その<鋭い>若手は、「えっ、こうなんじゃないですか?」と臆面もなく上司に切り込む。あるいは逆に、分かってないなぁ、とミーティングの場面などであえて発言せずに斜に構える。
こんな部下を、<普通の>上司は、「なんだこいつは」と疎んじてしまったり、できないヤツだと勘違いしてしまったりすることが結構多いのです。
それをどう見いだすか。理屈だけではうまくいくものではないのですが、おおよそこの手の若手は、経営者や役員からすると<面白いヤツ>に見えることが多いです。
ですから、企業規模にもよりますが、経営陣が極力、日頃から「我が社の未来の逸材」探しの目で若手社員たちとの交流の場を持つと良いですね。
さて、役員になる人の資質としては先の通りのようなところがありますが、では実際に、企業が役員を選出する際にどのような観点で選出するのか。ここでいう役員とは、おおむね事業執行に携わる役員=CEO以下CxO、執行役員を想定しています。
役員を選出する際に、3つのポイントがあると秋山さんは言います。それは、「実績」「技量」「雰囲気」です。
「実績」は、グループを束ねて成果を出すマネジメント実績と、実はそれだけではなく、個人として「ほんまこいつどうやねん?」といった個人としての力を見ているのです。要は、組織に乗っかってきただけじゃないよね?というところの確認ですね。率直に、ここをしっかり見る企業と、さほど見ない企業とが、実態としては両方あると秋山さん。望ましくは、個人としての実力もしっかり改めて確認するべきであることは言うまでもありません。が、皆さんの会社では、どうでしょう?
「技量」は、ビジネススキル、能力的特性、そして、それを実行していける思考・行動特性を持っているかどうかの部分です。
この「実績」と「技量」はどの会社でも公式的に役員登用時の資格要件にも入っていますし、確認がされます。が、実はこれだけでは決まりません。現実では、この2つ以外に大きく影響を及ぼす3つ目のポイント、「雰囲気」があるのです。
「雰囲気」は、その人の「見栄えや話し方」と「空間の作り方」なのですが、この「空間の作り方」がある意味くせ者です。
「空間の作り方」とは、「安心空間をどう作るか」「ディスカッションで戦わせるモードをどう作るか」「モードを作ってそのあと引き取る」などなのですが、この空間の創造が先天的にできる人が、います。僕自身も、過去に、この「空間創出力」に非常に長けた人の直下で働いていたことがあります(笑)。
秋山さんいわく、「でも、僕から言わせてもらうと、これができる人は過大評価されているんです。当人は何も大したことをしていないのに、全部が『この人がこうしてうまいこといっちゃった』となるんです」。
不思議なくらい、見られ方よく、自分の見せ方がうまい人、役員の方でいるんですよね。皆さんの周囲ではいかがですか?「空間の作り方はすごく重要なのですが、これだけでうまくやっている人が多く、空間の作り方だけが上手な人はお引き取り願いたいと思っているんです。大事なことは「実績」のある人や「技量」のある人なんです。見栄えや話し方はすぐにどうにかなります」と秋山さん。
役員になるべき思考・行動を行なっている人や資質を持つ人が、必ずしも若手・中堅の頃にその可能性を見いだされる環境にいるわけではありません。また、「空間の作り方」の話のように、その人を過剰に見積もって役員に登用するケースも、現実問題として少なからずそこここで起こっています。
そういう意味では、いかに望ましい経営幹部候補者を見逃さないか、見誤らないかについて、その目をトップや上役が養うことも非常に重要ですし、その目利き力が問われています。
株式会社経営者JP 代表取締役社長・CEOに
早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、現リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。2021年、経営人材度を客観指標で明らかにするオリジナルのアセスメント「経営者力診断」をリリース。また、著書には、『社長になる人の条件』『ずるいマネジメント』他。「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日経産業新聞」「週刊東洋経済」「週刊現代」「プレジデント」フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「WBS」その他メディア出演多数。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授