井上の知見・経験からも、人脈力がある方や人望がある方は、倒れにくいということが言えます。誰しも失敗したり、苦境に直面したりする。その際、人望や人脈力がある人は周りの人が救ってくれる、周りに助けられるのです。だから結果として致命的な失敗にはならず、大変なことはあるのだけれども乗り越えられる。それがEQだと、この調査結果から改めて思います。
組み合わせで見てみたものもあり、こちらも非常に参考になります。
経験とIQという特性を組み合わせても、4人に1人は失敗しています。経験豊富でIQが非常に高くても、4人に1人は失敗しているのです。EQの高いリーダーの重要性、必要性が認識できたのではないでしょうか。
フェルナンデス・アラオスは、こんなチャレンジをしています。ある企業のCEOを選ぶ際、候補が4人いて、それを4タイプに分けました。
先の調査結果に基づき、ここでCEOに選抜したのはDの「経験はあまりないけれど、圧倒的にEQの高い人」にしました。すると就任後、売上も利益も向上した。
この時にフェルナンデス・アラオスが「想定外だった」と言ったのは、他の候補者3人が全員会社に残ったことです。これは確かに、アメリカではレアケースです。一般的にはCEOの選抜に敗れたら、他の候補者たちは競合企業など他の企業に移籍することが多い。
ところが今回のケースでは、他の候補者3人が「Dがトップになるなら、僕は彼を支援したい」と全員が会社に残ったというのです。
あくまでも推察ではありますが、これぞEQ力の発揮です。Dは人望力、人徳、器量を併せ持つ方だったのではないか。日本語で言う「人間力」が、他の候補者を引き留めたのではないかと考えらえます。
経営者JPでは長らく、本当にしつこいくらい「トップやリーダーに選抜する人は、<できる人>+<できた人>にしましょうね」という話をしています。
「できる人」はIQが高い人。知的に優秀な人材です。「できた人」はEQが高い人。人間力に優れた人材です。この両方を見ましょうと何度も言っていますが、変革していける企業とか、成功する企業は、ちゃんと両方を見ているなと感じます。
今回の学びとしては、経営者選抜・リーダー選抜には、「IQ」「経験」「EQ」の3つを確認するのが良い。IQは地頭・偏差値で確認でき、経験はキャリアからうかがい知れ、EQはEQ検査でチェックできる。この3つをそれぞれアセスメントして明らかにし、その上で選抜検討を行う。
ぜひ読者の皆さんの会社でも、この3つを明らかにした上で、今回のDタイプに該当する候補者を抜てきするのが望ましいと思います。
株式会社経営者JP 代表取締役社長・CEOに
早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、現リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。2021年、経営人材度を客観指標で明らかにするオリジナルのアセスメント「経営者力診断」をリリース。また、著書には、『社長になる人の条件』『ずるいマネジメント』他。「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日経産業新聞」「週刊東洋経済」「週刊現代」「プレジデント」フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「WBS」その他メディア出演多数。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授