ディーゼル車規制など率先して環境問題に取り組む東京都が、国内で初めて企業のCO2排出削減を義務付けるという新たな施策を打ち出した。トップのコミットメントを強く求めていくという。
オフィスビルやデータセンターなどの大規模事業所に対し二酸化炭素(CO2)の排出削減を国内で初めて義務付ける東京都の「環境確保条例」改正案が、2008年6月25日に都議会において全会一致で可決された。燃料、熱および電気の使用量が原油換算で年間1500キロリットル以上の事業所が主な対象で、2010年度から全面施行となる。
同条例や経済産業省が策定する「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(省エネ法)などは、地球温暖化防止に取り組んだ「京都議定書」の批准を目指す日本政府の強い意識の表われだ。一方で、環境への負荷軽減をリードするべき企業には大きな影響を及ぼす。
東京都 環境局 環境政策部の千葉稔子主査は7月16日、都内で開催されたAMDの環境イベント「Green IT 2008」で講演し、企業の温室効果ガスの削減に向けて「トップダウンによる取り組みが不可欠」と、経営者のコミットメントを期待した。
環境確保条例改正に先立ち、東京都は2006年12月にプログラム「10年後の東京」を発表し、2020年までに温室効果ガスの排出量を2000年比で25%削減することをうたう。また、気候変動対策を先行的に提起する「東京都気候変動対策方針」を2007年6月に策定した。こうした背景には日本最大の都市である東京都の強い危機感がある。「東京のCO2排出量は約6000万トンで北欧1国分に相当する。今後アジアを中心にエネルギー需要がさらに増す中で、東京がほかの地域からエネルギーを供給してもらえる保証はない」と、千葉氏は省エネ実現に向けたCO2削減の必要性を強調した。
このたびCO2排出削減の義務化に踏み切ったことで「正直者がばかを見ないようになる」(千葉氏)という。従来は企業のモラルに依存しており明確な法的措置などはなかった。しかし改正案では、義務履行期限内にCO2削減が未達成の場合、措置命令により不足量の1.3倍をさらに削減しなくてはならない。さらに命令に違反する場合は、上限50万円の罰金、氏名公表、不足量の費用請求といった罰則を受けることになる(図1)。
削減義務は原則的に事業所やオフィスビルの所有者にあるため、「現場の管理者レベルではなく、経営者主導の下、トップダウンでCO2削減に取り組まなくてはならない」と千葉氏は意気込んだ。
今後は大規模事業所だけでなく「中堅・中小企業や一般家庭、自動車にまで具体的な排出量削減を求めていきたい」としている。
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明治学院大学 経済学部准教授