価格設定および売掛金は、景気循環のリスクを管理する上で非常に重要です。価格を設定する中で最も重要な要素は弾力性、つまり、価格の上げ下げに対する需要の変動率です。不景気の時に価格を上げても、需要が弾力的であれば利益は上がりません。しかし、この事実を認識していない経営者が沢山います。例えば、キンバリークラーク社は、1パックに入っているおむつの数を減らし、こっそりと価格を上げました。ライバルであるP&G社はキンバリークラーク社に対抗して広告を出し、価格を下げ、マーケットシェアを拡大しました。売掛金の管理には、手際の良さが求められます。アーデン・リアルティ社は、信用度が高く、深刻な経済の嵐を最も乗り切ることのできそうな賃貸人を選ぶことで、不景気に先んじて手を打っています。その一方で、かつて金利差で利益を上げていた金融業者であるフィノーバ社は、緩い売掛金管理方針を持ち、景気循環をきちんと理解していなかったためダメージを受けました。
価格設定および売掛金の管理には次のことに気を付けて下さい。
1、自社製品の需要の弾力性を知る
2、景気循環に合わせて価格設定をする
3、信頼は金。無駄にしないこと
不景気の時だからこそ、キャッシュフローの循環を良くする施策が必要なのです。価格設定について必要な3つの項目が書かれていますが、1番大切なことが、1番最後の「信頼は金」この一言に尽きるのではないでしょうか。
ヘッジは、景気循環リスクに対応する上で、最も有益なテクニックの1つです。デリバティブやその他の金融商品に手を出すことに不安を感じている人もいますが、それらは非常に有益です。景気循環を理解している人は戦略的アプローチを取ってヘッジを行います。彼らは、自分の業界以外の製品の価格変動から利益を得ようとはしません。しかし、自分達の通常のビジネスから利益を得る能力を妨害する恐れのある、リスクの全てあるいは一部分を無くすことが可能になり、対応可能だと考えられるレベルのリスクだけ自社に負わせることができます。
多様化することは、投資と同様ビジネスでも効果的です。例えば、フェデックス社は、陸上輸送を取り入れることで多様化を図りました。また、メキシコのセメント・メーカーであるセメックス社は、アジア金融危機の時にアジアの競合企業を買収する事で地理的多様性を取り入れ、それによって為替レート変動に対する自然なヘッジを確立しました。景気循環管理部門を外部委託する方法もあります。ビジネスリスクの全てが循環するわけではありません。景気循環を好転させたり、あるいは後退させたりする予測不可能な要素は、人口動向からテロ攻撃や自然災害など多岐にわたります。抜け目の無い予測、的確に計画を立てたヘッジ、多様化、戦略的価格設定、信用管理などの景気循環を管理する手段を講じることで、企業は上記のような外部からの衝撃に対処する事ができます。
ヘッジに関して言えば、確かに利益確保という面からは不確定なものである事も間違いないように思われます。しかしここで言及されているように、いかにそれを使っていくかということを明確に理解しながら戦略的アプローチをすることで有効活用できるとしています。
景気循環を適切に管理するためには、未来を予測する必要があります。未来の予測は思っているほど難しいものではありません。次のような経済指標が今後の動向や見通しを捉えるための有益な情報を提供してくれます。
利回り曲線が反転した時、つまり、下り坂になった時、不景気になります。反対に急な上り坂になった時は好景気がやって来ます。このように利回り曲線は、市場全体の有益な未来予想図を提供するものです。
株価は絶対的に信用できる指標ではありませんが、(利回り曲線のように)多くの投資家の意見を集めたものです。株価は景気後退を予測すると下がり、景気回復を予期すると上がる傾向にあります。
週間先行指標およびインフレ先行指数を提供する機関です。この2つの指標は極めて大きな影響力を持っています。
第二次世界大戦後に訪れた9回の不景気のうち1回を除いた全てが、石油価格の上昇の後に起こりました。
この本のタイトル「タイミング良く戦略を実行する」の本質が未来を予測するということに集約されているといってもよいのではないでしょうか?現状から推測して景気の流れがどの時点でどのように変化していくのか?それを予測し、その流れの中での「タイミング」を見つける事が経営を成功させる上で最も大切なことではないでしょうか。
この本の詳細
ピーター・ナバロは、カリフォルニア大学・アーバイン校の経営学部の教授です。ベストセラーとなった著書「If It’s Raining in Brazil,Buy Starbucks」があります。
経営コンサルタント(ビジネスモデルコンサルタント・セールスコピーライター)。経営コンサルタントとして、上場企業から個人プロフェッショナルまで、420社以上(1400案件以上)の企業経営を支援。特に集客モデルの構築とビジネスモデルプロデュースを得意とする。またセールスコピーライターという肩書も持ち、そのライティングスキルを生かしたマーケティング施策は、多くの企業を「高収益企業」へと変貌させてきた。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授