(1)ビジネス界にも「保険」の概念を
多くの日本企業は、すでに企業向け保険に加入しているはずだ。もちろん、こうした備えは必要だ。しかし、火災保険の保証金で社屋を立て直すことができても、個人情報漏洩保険のおかげで裁判費用や慰謝料が補填できても、失った財産や信用は戻らない。
企業にとって最大の保険は、「事故を起こさないこと」なのだ。火事も、個人情報漏洩も起こさないこと。さらに言えば、自然災害に遭っても最小限の被害に留められる企業であることが、最大の保険なのだ。そして、そのような保険商品は、保険会社では売っていない。企業が自社の中でつくり出すしかないのである。
この、「そもそも従業員が事故を起こさない会社になる」という保険を、自社内でつくり出す目的で構築されたのが、「組織行動セーフティマネジメント(BBS)」のシステムなのである。
(2)事故の9割は、一従業員の「悪気のない行動」から
大きな企業事故が発生する原因は、もとはと言えば1人の従業員の小さな行動にある。「まさか危険な事態などならないだろう……」1人の人間のちょっとした油断から大事故はおきるのである。経営者やマネジャーは、この事実を深く認識しなくてはいけない。
また、こうした従業員の行動を管理するということもマネジメントの重要な部分であり、これができていないことこそ事故が起きる原因だと考えなくてはいけない。
これまでの危機管理とは違って、「組織行動セーフティマネジメント(BBS)」は危険の芽を従業員一人ひとりの些細な行動の中に発見し、安全行動に変えていく具体的手法なのである。
(3)セーフティは「意識」ではつくれない
日本企業の多くが、セーフティやコンプライアンスについて考えるとき、まず、従業員の意識を変えさせようと必死になる。
「一人ひとりがもっと安全意識を高く持つこと」
「みんなの力で安全な職場を実現しよう」
しかし、いくら口を酸っぱくして言ってみたところで、いつまでたっても意識は変わらない。「組織行動セーフティマネジメント(BBS)」は、従業員の「意識改革」ではなく、あなたと従業員の「行動改革」である。
ここで、あなたが1つの行為をいかに具体的に落とし込めるか練習してみよう。「タオルをたたんで箱に入れる」という行為を、できるだけ細かく分解してほしい。
1、タオルをつかむ
2、作業台の上にタオルを広げる
3、タオルを半分たたむ
4、タオルをさらに半分にたたむ
5、タオルをさらに半分にたたむ
6、そのタオルを手に持つ
7、箱にタオルを入れる
いかがだったろうか。「タオルをたたんで箱に入れる」という指示は、実はとても曖昧なものなのだ。私たちはすでにそれが習慣化されているからできるのであって、本来はそうではない。
具体的にどういう行動をとることが必要なのか、何をしてはいけないのかを明らかにせずに、曖昧に訴えても従業員は動けない。従業員の意識ではなく、行動を変えていくことこそが重要なのだ。
従業員一人ひとりの「行動」に着目し、危機行動を安全行動に変えていく――それこそが、行動科学をベースにした「組織行動セーフティマネジメント(BBS)」なのである。
あらゆるビジネスにおいて圧倒的なスピードと変化が求められるいま、些細な行動が大きな致命傷へと繋がる危険性は飛躍的に高まっている。それらは、BBS理論の「その組織にいる人の“行動”を変革すること」で飛躍的に改善できる。
日本企業が真に安全なものとなる道筋を、「BBS」でどれだけ具体化できるかどうか――「組織行動セーフティマネジメント(BBS)」であなたの企業セーフティに化学変化を起こしてみてほしい。
社団法人組織行動セーフティマネジメント協会代表理事。アメリカの行動分析学会 ABAI(Association for Behavior Analysis International)会員。日本行動分析学会会員。株式会社ウィルPMインターナショナル代表取締役社長兼最高経営責任者。
米国のビジネス界で大きな成果を上げる行動分析を基にしたマネジメント手法を日本人に適したものに独自の手法でアレンジ。「行動科学マネジメント」として確立。 その実績が認められ、日本で初めて組織行動の安全保持を目的として設立された社団法人組織行動セーフティマネジメント協会代表理事に就任。グローバル時代に必須のリスクマネジメントやコンプライアンスにも有効な手法と注目され、講演・セミナーなどを精力的に行う。著書に「組織行動セーフティマネジメント」(ダイヤモンド社)「組織が大きく変わる最高の報酬」(日本能率協会マネジメントセンター)、「短期間で組織が変わる行動科学マネジメント」(ダイヤモンド社)などがある。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授