文句を言う人はリーダーに向いている人を信じても、仕事は信じるな!(2/2 ページ)

» 2011年07月29日 07時00分 公開
[小山 昇,ITmedia]
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能力が同じなら、酒が飲める人をリーダーにする

 リーダーを選ぶ時にはコミュニケーション能力を重視します。仕事には、個人の力で成果をあげるものとチームで成果をあげるものがあります。チームで仕事をする場合、リーダーの役割として部下とのコミュニケーションが不可欠です。そのため、他の能力が同じならば、わたしは酒が飲めるほうをリーダーに選びます。

 それだけでコミュニケーション手段が確実に1つ増えるからです。「情」は回数によって培われます。何度も部下と面談したり、飲みに行ったりするうちに信頼関係が生まれ、仕事にも生きてきます。

 わたしはよく「社員には嫌な思いをさせろ」と言います。それぞれの社員やりたいことをやっていては、会社は成り立ちません。嫌だろうが、つらかろうが、営業へ行かせることもありますし、大変な量の仕事を課すこともあります。

 環境整備の徹底も、「嫌なことをさせる」の1つです。職場の整理整頓や徹底的に掃除をするなど、すべての社員は嫌に決まっています。朝の勉強会にしたって、「来たくない」と思うのがまともな人です。しかし、嫌なことをさせていくうちに、まずは物事の形が揃いその後で徐々に社員の心も揃ってきます。

 「社員の自主性を重んじる」とか「社員には好きなことをさせる」など、聞こえのいいことばかりを言う会社に限って、社員はバラバラの方向を向いていることが多いと感じます。そんな状況では、「社長が決定し、社員がそれを実施する」という基本構造はあっという間に崩れます。だから、わたしは積極的に社員に良いことを強制しています。悪いことは教えなくても覚えますから。

 同じように、上司は部下に良いことをさせなければなりません。最初は反発もあるが、無理矢理に良いことをさせているうちに、チームとしての統率がとれるようになり、少しずつ気持ちも1つになっていきます。まずは形を整えることです。そうすれば、心は後からついてきます。しかし、無理矢理に良いことをさせるだけでは人間関係は悪くなる一方です。そこで必要なのが、コミュニケーション能力です。

 「良いことをさせる」という行為は同じでも、上司と部下の間に人間的なつながりがあれば、その意味合いは大きく違ってきます。

 仕事のうえで上司が部下を気遣い、頻繁に声をかけることも必要ですし、仕事を離れて飲みに連れて行くことも大事です。上司のポケットマネーでうまい酒をおごってもらえば、それだけでも多少は見る目が変わるものです。

リーダーなら賞与の額を改ざんしろ!

 上司が部下を飲みに連れて行くという話が出たので、ちょっとユニークな評価の仕方も紹介しておきます。武蔵野では賞与は現金払いなのですが、実際に手渡しをする賞与の袋とは別に、まったく同じ袋を社内で販売しています。なぜだか分かるでしょうか。

 たいてい賞与をもらったら、その袋を家に持ち帰り、それを奥さんへ手渡すものです。「お勤めご苦労さま」くらいのねぎらいの言葉をもらって、賞与は丸ごと奥さんの手中に収まってしまう。そこからわずかな小遣いをもらい、なけなしのお金で安酒を飲むというサラリーマンも多いでしょう。

 しかし、それでは部下におごるお金がありません。上司は部下におごることも必要と述べたばかりなのに、経済的な理由でそれができないです。その対策の一つとして、賞与の金額を改ざんし、本当の賞与袋から数万円を抜き取れるように、別の袋を会社が販売している。

 そんなことまでやっている会社はまずないでしょうが、ニセの賞与袋を買い、金額を改ざんしてまで部下に褒美を与える人をわたしは評価する。賞与の改ざんもせず、部下に褒美を与えるお金もないような人はリーダー失格です。それがわたしの考えです。

著者プロフィール:小山 昇

株式会社武蔵野 代表取締役社長。全国の経営者でつくる「経営研究会」主催。1948年山梨県に生まれ、東京経済大学卒業後、日本サービスマーチャンダイザー(現在の株式会社武蔵野)に入社。昭和52年に株式会社ベリーを設立し社長に就任、昭和62年に現職に就任。 平成2年、株式会社ダスキンの顧問に就任。平成4年顧問を退任、現在に至る。 株式会社武蔵野は、国内企業で初となる2度の経営品質賞を受賞。(2000年、2010年)その経営ノウハウを活かし、“中小企業の経営品質”にフォーカスした講演活動や書籍出版を行っている。


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