中国では、2012年6月にモバイルデバイスからのインターネット利用者が全インターネット利用者のトップになった。モバイル経由のネット利用者数は3億8000万人。中国は、モバイルの時代に突入したといえる。
「数字からみると確かにモバイル時代へのシフトというのは間違いではない。しかし、当社のトップは警戒感を強めている。モバイル向けのインターネットビジネスは、ECとゲーム、広告など一部の分野でしかビジネスモデルが確立していない。ブームを煽って投機マネーがなだれ込み、熱が冷めたあとは何も残らなかったということにならないようにしなくてはならない」(高橋氏)
日本人ビジネスマンがよく訪れる上海では、多くの中国人がスマートフォンなどを使っているのを見かける。しかしこれだけで、中国全土がモバイルユーザーであふれていると勘違いしてはいけない。
「地方都市では、古い携帯電話を使っていたり、ボロボロのデスクトップPCを使っている人も多い。全体の状況を把握するには、一部の都市部での光景だけを参考にしてビジネスを始めるのは危険」(高橋氏)
中国全土を見回っている時間はないのだから、検索サイトで、簡単な調査をしてみるのが一番だということか。
高橋氏が注意を促すように、こうした勘違いから中国ビジネスで痛い思いをした人、企業は多い。だから、中国ビジネスは儲からないというわけだ。しかし、高橋氏はこうした考え方にも疑問を呈する。スピード重視、結果をすぐに求めるという先進的な中国企業でカルチャーショックを受けてきた高橋氏だが、実際の中国ビジネスはもう少しじっくりと粘り強く進めるべきではないかと話す。
「オンライン旅行予約業界の事例でいうと、現在中国でのおおよその客単価は2000円〜3000円。同じことをしても日本だと8000円ぐらいにはなる。単純に考えると3倍以上の効率でビジネスを進めないと中国ビジネスは合わないという考えになる。中国の消費者には独特の特徴があり、百度でBtoC、BtoB問わず調べてみれば見えてくる」
高橋氏によると、中国の消費者、ビジネスマンはサイトで探しているものが見つかると、電話やチャットで直接問い合わせることが多いという。だから、サイトには電話番号やチャットのアドレス、担当者の名前など、他国のサイトではなかなかお目にかかれない情報が目立つように記載されているという。つまり、サイトでビジネスや取引きが完結するよりも多くの潜在顧客をじつは呼び寄せているケースも多いというのだ。
「また、日本、台湾、韓国などと比べて中国はユーザーロイヤリティが低い。キャンペーンが終わって、別の会社がサイトで安売りを始めれば、雪崩を打ったごとくそちらに流れこんでいく傾向が強い。何度か購入しているから安心なので少し高くても同じ会社から買うという傾向が少ない」(高橋氏)
高橋氏によれば、中国でのECやオンライン予約ビジネスで成功している企業は、短くとも10カ月前後はサイトの改善を重ねながら、中国市場の特徴を読み取り、成果を少しずつ上げていくという。
「隠れている市場の特性と自社の製品やサービスの強みをどううまくかみ合わせていくか。そのかみ合わせのポイントが何かを研究していくことが、成功への近道だろう」(高橋氏)
かみ合わせのポイントをいち早く把握するツールとして、改めて検索サイトを見直す必要があるのかもしれない。
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