経営チームはこうつくるドラッカーに学ぶ、成功する経営チームの作り方(2/2 ページ)

» 2016年08月31日 07時31分 公開
[山下淳一郎ITmedia]
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主語をわれわれにする

 経営チームで話し合いをする時、主語が「わたし」や「こちらの部署」であっては、お互いの考えが交わることはない。しかし、主語を「われわれ」、または「わが社」にすれば、組織全体に立って考えざるを得なくなり、組織全体に立った発言にならざるを得なくなる。お互いが、組織全体に立って考え、組織全体に立った発言になるとき、考えの接点が生まれ、初めて「われわれ」の考えを創り出しすことができる。共通の考えを創り出すことによってはじめて、仕事上の協力関係を生み出していくことができる。

 今日から、社内で何か話し合いをするとき、「主語を“われわれ”にしよう」と申し合わせをして進めてみてほしい。実際、私は経営チームのコンサルティングの仕事をする場合、主語を「“われわれ”にして話し合いましょう」と申し合わせをしたうえで進めるようにしている。効果があるので実行してみてほしい。2〜3カ月継続すれば目に見える効果を実感できるはずだ。これが仕事上の協力関係を生み出す第一歩となる。

 その小さな一歩は、きっと大きな前進になる。

5つの問いで共有の考えを作り出す

 経営の根幹に関わる方針について、経営チームに共通の考えがなければ、何か重要なことを決めるときに正論と正論がぶつかり合う消耗戦になってしまう。正論と正論がぶつかり合うというのは、そもそも間違っていることを言っている人などいないからだ。

 建物は地面の下にある基礎がなければ、どんなに良い建物でも簡単に崩れてしまう。同じように、会社も経営の根っこがしっかりしていなければ、どんなに良い手法を駆使しても簡単に倒れてしまう。経営者は、その職務を果たすために、何を考え、何を決め、何を行えばいいのか。

 経営者のそんな難題に助けの手を差し伸べてくれるものが、「最も重要な5つの問い」だ。これは、「わが社が社会に貢献できることは何か」「わが社はどんなお客様のお役に立ちたいのか」「お客様が望んでいることは何か」ということについて、いろいろな角度から考えを巡らし、さまざまな視点から会社の考えをしっかり固めよう、ということが質問形式でまとめられたものだ。

 ドラッカーは、著作『The Five Most Important Questions』で、最も重要な5つの問いを教えてくれている。ドラッカーが亡くなったのは2005年だが、この著作の発刊は2008年だ。この著作は、ジム・コリンズやフィリップ・コトラーなどの協力によってまとめられたものだ。

第一の質問「われわれの使命は何か」

第二の質問「われわれの顧客は誰か」

第三の質問「顧客の価値は何か」

第四の質問「われわれの成果は何か」

第五の質問「われわれの計画は何か」

 一つひとつの質問の中にさらに細かい問いがたくさんがあるが、ここでは全体像の紹介にとどめる。基本的な考えについていざ経営チームで話し合うと、お互いの考えに違いがあることが浮き彫りになる。一つひとつの質問に対する考えをそれぞれで出し合い、議論を通じて、共通の考えを作り出してほしい。

 共通の考えを作り出す取り組みによって経営チームが形成されていく。経営チームがなければ経営チームを構築し、経営チームがあれば、経営チームをチームとして機能させ、さらに皆さんの会社が繁栄することを心から願っている。

著者プロフィール:山下淳一郎

トップマネジメント株式会社 代表取締役

ドラッカー専門のコンサルタント。コンサルティングファーム出身、上場企業役員を経て、トップマネジメント株式会社を設立。上場企業を始めとして、IT企業の経営チームにドラッカーの理論を活用するコンサルティングを提供している。一般社団法人日本経営協会専任講師、淑徳大学の経営学講師、デジタルハリウッド大学院大学客員教授、ダイヤモンドビジネスタレント派遣講師を務める。著書『ドラッカーに学ぶお客様を幸せにする会社の作り方』(角川フォレスタ)、寄稿に『人材育成の教科書』(ダイヤモンド社)、『企業と人材』、『経済界』、『人事マネジメント』等。


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