井上 オフィスの廊下に掲示されている社員一人一人のポートレート写真にも「セカンドファミリー」の理念が反映されている感じがしました。
神田 社員のポートレート写真は、2014年6月に本部を移転したときに社員間のコミュニケーションを密にしていきたいという思いから、顔と名前を一致させる施策として始めました。社員一人一人が大切なものをテーマにポートレートを撮影し、エントランスへ続く廊下に掲示しています。大切なものが分かることで、会話が生まれるきっかけになっています。
井上 他に、理念を体現した特徴的な取り組みはありますか。
神田 人事部の社員がひとりで日本全国を巡り、各地の社員と懇親会を開くという企画を2017年3月から始めました。私も地方の社員へ向けてビデオメッセージを寄せています。
井上 社員同士の仲のよさが伝わってきます。
神田 社員同士の仲のよさがストライプインターナショナルの強みです。新卒採用の場でも、社員同士の親密感を学生さんに伝えることを重要視しています。よい関係性を社内から作ることで、お客さまともいい関係を作ることができ、その輪が広がっていくと考えています。
井上 社員満足度を高めることを目指し、そのことが結果として顧客満足度の向上につながっているということですが、社員満足度はどのように調査していますか。
神田 2014年から実施している社員満足度調査では、アンケートを社員全員にメール送信しています。匿名で回答できる仕様になっており、集まった主な意見、要望についてはできる限り応えることを意識しています。
井上 社員満足度調査をもとに作った制度はありますか。
神田 「ライフスタイル休暇」という制度を作りました。社員自身のライフスタイルの向上を目指す休暇制度です。ストライプインターナショナルでは、2015年度に理念を「セカンドファミリー」にしたのと同時に、それまでは「ファッションアドバイザー」と呼んでいた店舗スタッフを「ライフスタイルアドバイザー」へと名称変更しました。
単に洋服を売るだけでなく、お客さまのライフスタイル全体に対してアドバイスをする気持ちで接客することを目指しています。そうすることで、お客さまとも「セカンドファミリー」のような関係性を築くことができるのです。
お客さまにライフスタイルの提案をするためには、社員自身がすてきなライフスタイルを送る必要があります。オフタイムにどれだけ充実した時間を持てるかが、ライフスタイルアドバイザーとしての仕事の質につながるのです。
井上 今後、ストライプインターナショナルが目指す方向性について教えてください。
神田 当社代表の石川康晴はよく「アパレルは斜陽産業だ」といい切っています。これまでのアパレルがやっていなかったことをやっていかなければ会社として生き残っていけません。そういった考えのもと、2015年度に事業領域を「ライフスタイル&テクノロジー」とし、新たな価値の提供へとかじを切りました。定額ファッションレンタルサービス「mechakari(メチャカリ)」はそういった流れの中生まれたサービスです。今後も「ライフスタイル&テクノロジー」の分野でこれまでにない新たな価値を提案したいと考えています。
「過去の成功事例を自ら叩き壊す!」人材育成や商品作り、事業領域まで、全てにおいて新たなやり方を断行する姿勢がストライプインターナショナルの成長をけん引しているのだと分かりました。顧客ニーズの移り変わりは早いですが、それ以上のスピードで会社を変えようとする意識には感服します。これは代表自らが、アパレルは斜陽産業であるといい切れるからこそ行える変革だと思います。
単に服を売るのではなく、顧客によりよいライフスタイルの提案をしたいといった視座を持つスタッフ育成は、社内の人間関係のよさに比例することも分かりました。顧客は服を買うことが目的ではない、その服を着たワクワク感を求めています。「その服を着て何を得たいのか」という問いかけに真摯(しんし)に取り組んでいる様子が、顧客満足と顧客創造をもたらしているのだと感じました。個人的には、この会社で働く社員は幸せだろうなあと心底思います。
井上敬一
ブランディングコミュニケーションデザイナー
株式会社FiBlink代表取締役
兵庫県尼崎市出身。立命館大学中退後、ホスト業界に飛び込み1カ月目から5年間連続ナンバーワンをキープし続ける。当時、関西最高記録となる1日1600万円の売り上げを達成。業界の革命児として、関西最大規模のホストクラブグループの経営業を経て、現在は実業家として企業、個人のブランディングやアパレル、サムライスーツなどのプロデュースを手掛ける他、人に好かれるコミュニケーションを伝える研修・講演を展開している。また、WEBセミナー「プレジデントキャンパス」により、中小企業経営者の学びの場をもっと身近なものにして日本経済を牽引する役割を目指す。
圧倒的な実績に裏付けられたコミュニケーションスキルをわかりやすく説く講演は、多くの企業・団体から支持を受けている。これまで数多くのメディアに取り上げられ、独自の経営哲学で若いスタッフを体当たりで指導する姿はフジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』で8年にわたり密着取材され、シリーズ第6弾まで放映されている。
主な著書に、「ゴールデンハート」(フジテレビ出版)、「人に好かれる方法」(エイチエス株式会社)などがある。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授