自己統制できる仕事は働きがいにもつながります。ただし、これは上司から言われた仕事を拒め、ということではありません。むしろ、言われた仕事の目的や背景から洞察し、期待を上回るような仕事や役割を提案し創り出すことを指しています。
2つ目は、「周囲の人たちを巻き込む」ことです。周囲の人たちとは、社内の先輩や上司、後輩、経営層、社内の同僚・他部署、社外ネットワークなどを指します。優秀な人が陥りがちなわなに、自ら仕事や役割を作ることと現状批判することを混同し、かつ批判にとどまり周りが動いてくれないことに不満をためる傾向があります。
しかし、自ら仕事や役割を作ったとしても、それを実現しなくては自律した働き方とはいえません。たいていの場合、仕事は一人では完結せず、多様な人たちとの協働によって成り立っています。仕事を続けられる人になるには、言ったことには責任を持ち、当事者意識をもって実現のために周りに働きかけるのです。そうして、自分を動かす仕事から人を動かす仕事へシフトするべきなのです。
3つ目は、しっかりと成果、結果を出すことです。仕事を続けていくためには、そもそも自分が手掛けた仕事が誰かの役に立ち、その結果としてしっかり収益に結び付かなければいけません。私は働きがいを得るためには、お金を働く目的にすべきではないと考えていますが、仕事を続けていくうえで結果としていくら稼げるかを計算できる思考は大切です。
上司の評価によって給料が上がった、下がったと、一喜一憂するビジネスパーソンが多いですが、その状態は仕事を失う人の思考の典型です。仕事を続けられる人になるには、自分はどれだけの成果を出しどれだけの収益を生み出したのだから、そこから拠出される正当な報酬はいくらです、と計算できる思考を持たなくてはいけません。つまり、自律するには、自分の介在価値を客観的に把握することが欠かせないのです。
ビジネスとは、つまるところ商売です。商売人であれば誰しも、自分がいくら売り上げて、いくら原価や経費がかかって、利益がいくら手もとに残るか意識しながら働いています。もちろん営業職についている人であれば、売り上げ目標を持ち、値引きの下限なども意識して働いているでしょうが、それだけでは食える人ではありません。
まずお客さまの役に立つことが第一。その結果、生まれた会社の収益のうち、自分の貢献度がどの程度で、税金や社会保険料まで勘案して、手取りいくらになる、と自分の収入に落とし込めて、はじめて仕事を続けられる人の仲間入りなのです。これからは、お金に振り回されないためにお金に強くなるべきなのです。
戦後の高度成長期を経てバブル経済崩壊後、この国は再浮上のきっかけをつかめそうでつかみきれずに平成の30年間を過ごしてきたように思います。社会課題は山積すれども、ポスト平成時代にこの国がもう一度輝き、働く一人一人が希望を育んでいくためには、政治や行政が変わることや、カリスマ的なリーダーが登場することを待つのみでは心もとないと思いませんか。一人一人が依存心を戒め、自律的に働き生きていく、そんな自律できた人同士が互いに尊重し連携し合うことこそが、明るい未来を築いていくと私は考えます。
FeelWorks代表取締役・青山学院大学兼任講師・(株)働きがい創造研究所会長
「コミュニケーションが人と組織を変える」をスローガンにする人材育成の専門家集団FeelWorks創業者。兵庫県生まれ。大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒業。リクルートを経て、2008年に「人を大切に育て活かすかす社会づくりへの貢献」を志に起業。独自開発した「上司力研修」「プロフェッショナルマインド研修」「キャリアコンパス研修」「人を活かす経営者ゼミ」「女性リーダー育成講座」「育成風土を創る社内報」など働く環境の変化や時代性を踏まえた先進的なサービスを提供し、350社以上で「人が育つ現場づくり」を支援している。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年に働きがい創造研究所設立。人を育て活かす「上司力」提唱者として自ら年に100回を超える講演活動も。TV番組「ワールドビジネスサテライト」「サキどり↑」「ニュース シブ5時」「めざせ!会社の星」などに出演。YAHOO!「前川孝雄の人が育つ会社研究室」、読売新聞「前川孝雄のはたらく心得」など連載も多数。一般社団法人企業研究会協力委員、ウーマンエンパワー賛同企業審査員なども務める。
著書は「上司の9割は部下の成長に無関心」(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、「一生モノの学ぶ技術・働く技術」(有斐閣)、「ダイバーシティの教科書」(総合法令出版)、「女性の部下の活かし方」(メディアファクトリー)、「年上の部下とうまくつきあう9つのルール」(ダイヤモンド社)、「部下を育て、組織を活かす はじめての上司道」(アニモ出版)、「30代はアニキ力」(平凡社)、「働く人のルール」(明日香出版社)、「勉強会に1万円払うなら、上司と3回飲みなさい」(光文社)など多数。最新刊は『「仕事を続けられる人」と「仕事を失う人」の習慣』(明日香出版社)。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授